随筆 横目で眺めた経済学 ⑭インフレ・デフレ 思い出話

山口大学経済学部同窓会

鳳陽会東京支部

【2025年8月 トピックス】

◆ケインズ政策・・・デメリットのインフレ

インフレ下では貨幣価値が下がる。

私が幼少の頃、生前の祖母から、私のために苦労して「10万円」を貯めたという話を聞いた。

今の貨幣価値に直せば100万円ほどを貯めていたような言い方だった。

昭和の時代に入るとインフレで貨幣価値が大幅に目減りした。激減だ。

祖母も不本意だったに違いない。

◆貨幣価値の下落・・・これは悪い話ばかりではない。

借金をしている身にとっては、借金がインフレ分だけ実質的に目減りし、負担が軽くなる。

いわゆる債務者利得というやつだ。

私が社会人になった頃、上司が新居を購入。オイルショック後のインフレで、給料は上がるわ、住宅ローンの「実質」残高は減るわで、返済が楽だったはずだ。

◆しかし、市民社会への影響をフローで見ると少し違った姿になる。

賃金と物価。

賃金は物価の上昇に連れて上がっていくが、そのスピードは通常物価上昇幅を追い越すことはない。

常に後追いだ。

従って実質賃金は切り下がることになる。

ただ、こうした問題を抱えたまま、経済は活況を呈することになる。

なぜか。

前向きの「予想」があるからだ。

モノの値段が上がっていく時は、値段が上がる前に買いたい。

このために先買いでモノが売れ、企業は生産し、従業員の給与も増え、経済は活況を呈する。

実際、当時はそういう経済サイクルであった。

賃金上昇が一時的に物価に追いつかなくても、あとで追いついてくれる。

毎日の生活が目に見えて変わっていき、時代の高揚感があった。

ユーフォリア・・・

当時、日本の姿はどの国よりも立派であるような感覚に浸かっていた気がする。

これに比べ、デフレは厄介だ。

続く

(学23期kz)

参考

◆国立大学授業料の変遷

(単位は円)

1963年(昭和38年) 12,000

  ↓

1971年(昭和46年) 12,000  

1972年(昭和47年) 36,000

1976年 (昭和51年)96,000

1978年(昭和53年)144,000

1980年(昭和55年)180,000

1982年(昭和57年)216,000

1987年(昭和62年)300,000

1993年(平成 5年)411,600

2005年(平成17年)535,800

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