山口大学経済学部同窓会
鳳陽会東京支部
【2025年8月 トピックス】
37期の上野さんの投稿「なくなって寂しいもの」に関連して
岡山支部 岡山Bさんからの投稿
◆90年代の地方の工場における情報系のネットワークの進展の軌跡について記載してみよう。
世間では、Windows95に沸き返った1995年があった。テレビのニュースではそのソフトの発売に併せ、徹夜組、また長蛇の列が出来た。そして、やっと手に入れたWindows95でも、用心しないと帰路の途中に盗難にあってしまうかもしれないほどの過熱ぶりであった。
地方の工場に仕事の中にWindows95が導入してされてきたのは確か96年だったと記憶する。
◆本社のオーナー社長は若い頃システム管理室の室長の経験も積んだ方だったから、コンピューターに関する敷居は低かった。既に基幹系のシステムは国内の「H社」のものでしっかり動いていた。そして、その後、会社の中では、生産統合システムと大きなプロジェ
クトを組み、中小企業の製造メーカーとしては、注目される内容のものとなった。
「H社」のシステムPRのような小冊子には、企業名は伏せられていたが紹介された。
ある意味、新たな情報系のネットワークを導入するには環境は整っていた。
◆しかし、地方の工場でどのように推進するのか?誰がキーマンとなって、みんなに普及していくのか、この辺は時の流れに任せるようなあいまいな状態だったような記憶がある。
当時の自分は工場総務で比較的若手でもあった。何とはなしに自分が少し勉強して、その役割を果たさないといけないかな?とぼんやりした感想を持っていたことは事実であろう。
そこで地元の商業学校で、夜学で無料でやっていた「Windows95入門」と言うような講座を自主的に受けてみた。その席には地元のケーブルテレビでネットワーク構築をするような人も参加しているような状況であった。つまり、地方では、まだまだ誰もがヨチヨチ歩きであった。
その講習が終わって、数カ月した頃だったと思うが、工場総務の人間に情報系のネットワークを広めるような役回りが振られてきた。
先ずは、四の五の言ったって、始まらない。コンピューターといえども通常の業務をコンピューターに業務を置き換える(置換)ことで成り立っているのではないか?と言った実感があった。
そこで、如何にも今の業務がどのような部分が、コンピューターの業務になるのかを対比することから始めた。
◆最たるものが『メール』(電子郵便)と言った仕組みだ。
郵便:
①紙と封筒の準備
②手書きの文字書きによる文書作成
③封筒へのあて名書きをして、切手を貼る
④郵便ポストまで赴いて、封書の投函となる。
大まかにはこれが今まで事務所の中で行われていた事であろう。
その後郵便物は赤いポストを中心として郵便局内での大まかには次の流れになろう。
⑤郵便ポストから郵便局員による集荷⑥局内での郵便番号ごとに郵便配送の振り分け⑦配達局での配達順による並び替え⑧オートバイにより郵便配達員さんが各お宅へ郵便物のお届けとなる。
もう、既にメールに慣れきってしまった皆さんなら、何をまどろっこしい説明なのか!
この実感が情報系のネットワーク凄さである。
パソコンに向かい、宛先をクリックして、件名を入力、敬称も時候の挨拶もすべてすっ飛びとなる。用件を書きこみ、送信ボタンとクリックすると相手のパソコンの受信トレーまで”電子郵便”は届いてしまうのだ。
◆80年代半ばに社会人になってから、10年!
劇的変化は突然やってきた!
上記のような流れをレジメの左右に並べ、説明の時もアナログとデジタルを具体的にテーブルの前に並べて先ずは皆で感じてもらう。
アナログ ➡ 紙と封筒 郵便切手 おもちゃの赤ポスト
デジタル ➡ 2台のパソコンを持ち込み”電子郵便”を送ってみる、返信してみる、送受信が成り立つ
文字通り、「習うより、慣れろ!」の勢いで社内には急速に普及していった。
◆「やぎさんゆうびん」(作詞:まどみちお)の童謡の歌詞をみてみよう。
1 白やぎさんからお手紙着いた
黒やぎさんたら読まずに食べた
仕方がないのでお手紙書いた
さっきの手紙のご用事なあに
2 黒やぎさんからお手紙着いた
白やぎさんたら読まずに食べた
仕方がないのでお手紙書いた
さっきの手紙のご用事なあに
こうした世界も生まれなくなる。
我々は便利さと時間と効率性を得たかもしれない。一方、その代わりに失ったものを自問自答してみると哲学的な問題になるかもしれない。
◆2024年1月に郵便はがき、郵便封書に関する料金が大幅に改定された。
ある部分儀礼的であったかもしれない年賀状の交換といった文化。
それさえ、30年の年月の間に、情報系のネットワークは打ち壊していった。
(岡山B)
