上がらない日本の賃金③ 

労働側の要因 その2

◆増える非正規労働
バブル崩壊による第1次就職氷河期、リーマンショックや東北大震災による第二次就職氷河期もあり、正社員になることを諦め、週4日あるいは週3日と自分のスタイルに合わせた働き方を志向する若者も増えている。最近では非正規労働が労働力の4割にもなっており、これも平均賃金が伸びない一因になっている。
 非正規労働と正社員では賃金や福利厚生がかなり異なる。最近では同一労働同一賃金、すなわち同じ職務を担う非正規労働者の待遇を正社員の待遇に近づけるよう動きもみられるが、いまだ両者の隔たりは大きい。
しかし、いち早く非正規のパートタイム労働と正社員との待遇格差を撤廃した国があった。オランダだ。

オランダでは、かつて経済危機に陥った際、パートタイム労働者の賃金・福利厚生を正社員並みに高めた。また半日勤務でも取りやすくし、しかも生産性を落さないよう「ワークシャエリング」できる環境を整えた。
こうしたこともあり、1週間を仕事に、趣味に、そして社会活動にと使い勝手の良い働き方ができて、しかも正社員並みの時間給が払われる。しかも、民間と行政のはざまでこれまで手の届かなかった社会活動分野に積極的に参加する者が増え、今やオランダはNPO大国になっており、行政の側も多いに助かっているようだ。
日本でも検討に値しよう。

◆賃金の低迷と学生生活
これまで見てきたように、1997年以降、20年以上にわたって賃金の低迷が続いた。
このため、コロナの前にあたる平成30年時点の統計で、約5割の学生が奨学金に頼っており、今後の奨学金の返済を苦に親元を離れての独り暮らしを諦め、実家から通える就職口を探す学生も出てきているという。
 こうしたところにコロナが襲った。
コロナ禍では学生のアルバイトの口が少なくなり、学資を稼ぐ手立ても限られることになった。それよりも、学資の出し手である親の賃金も下がり、場合によっては解雇されるに至り、学生生活を続けることができなくなった事例も報道された。
授業料は決して安くはない。こうした中での賃金低迷が続けば、大学教育の危機にもつながりかねない。
世界に伍し、あすの社会・経済を背負うのは日本の若者だ。

これではいけない。
(学23期kz)