69歳で起業 (その1)

2020年の5月、まさにコロナが猛威を奮わんとする時に異業種4名で起業した。

日本では従来、大麻は絶対禁止の薬物として認識されてきたが、世界の動きをみると医療用や健康増進用として近年合法化する動きが加速している。こうした中、日本でも動きがみられ、国会議員の間でも勉強会が始まっている。

2013年夏、米国CNNの医療ドキュメンタリー番組で、週に300回のてんかんの発作を起こす少女が、麻の成分CBD(カンナビジオール)を用いることで発作が週1回に劇的に改善したと報じられた。米国では2017年にFDA(アメリカ食品医療品局)が大麻成分の新薬を承認し、WHO(世界保健機構)がCBDの有効性、安全性を公式に認めた。それ以降、全米で医療・健康増進の大麻関連ビジネスが盛んになり、そこに雇用や投資が集まる「グリーンラッシュ」が始まった。多くの企業がCBD含有の機能性食品を販売しており、CBD入りの飲み物、キャンデイ、グミが店頭、スーパーに並んでいる。

また、2018年にはトランプ大統領が農業法案にサインし、これより大麻は米国で農作物として扱われるようになり、また世界アンチ・ドーピング機構が薬物検査対象から除外したことで、スポーツ界では試合前の緊張感緩和や不眠対策用にCBD飲料が広まっている。

日本では、大麻草の葉や花に含まれる成分THC(テトラ・ヒドロ・カンナビノール)は覚醒作用があるため絶対禁止となっており、茎と種子からとれたCBDのみ合法となっているが、欧米では医療用、産業用(ヘンプ)を嗜好用と区別し、研究も試験も栽培も活発化している。

薬理学上、常習性という観点からすると、大麻はカフェインと同レベルであり、コーヒー並みになっている。むしろ問題なのは、ヘロインと同レベルのアルコールの方だ。両者の中間がコカインとニコチンとなっている。

最近、日本でも動きがみられるようになっており、国会議員の間でも勉強会が始まった。本年5月10日に国会議員主導でCBDについての勉強会が議員会館で開催された。そこでは、タイで日本向けの品種改良タイプを国と大学、企業が一体となって研究開発中だとする報告があり、そのあと厚労省の担当者から国内の現況が発表された。

大麻草は、石油から造られる素材、例えば住宅用断熱材、自動車内装材、強化プラスチックなどと代替可能で、バイオ燃料にもなる。

また大麻草は中国の代表的な植物由来の薬品学研究書「本草綱目」にも掲載されており、薬草でもあった。放射性物質も吸収でき、生育も早く、3か月で10メートルにもなる品種もある。しかも肥料なしで生育できる。このように、調べれば調べるほど日本の産業復活に資する植物といえる。これが起業の目的の一つでもあった。

現在、我々は粉末原料(アイソレート)を食の基準で世界一厳しいヨーロッパの英国やルーマニアから輸入したものを、日本で加工、製造販売している。この4月には高濃度水溶性CBDを大学研究機関と共同開発した。さらに、ビール製造会社とCBDノンアルコールビールの仕込みも始めた。

販売は自社サイトと大手通販サイトで行っているが、実店舗も福岡、秋には名古屋で、また東京でもオープンする予定だ。

ビジネスを展開するにあたり、山大経済同期のM君に顧問をお願いして、アドバイス、協力を頂いている。

(学23期 元ワンゲル T.H.)