「仮囲」の中の世界

66期K

(注:建設会社入社4年目の若手女性会員)

建物は今でもそのほとんどを人の手で作っています。東京タワーも、スカイツリーも、街中に立ち並ぶ高層ビルも、全ての建物がその大半を人の手で作っています。街中にある建設現場は仮囲(かりがこい)がしてあり、中を覗く機会はほとんどないと思います。私もそうでした。この仮囲の中で、一体何が行われているのか。

私はその世界に足を踏み入れました。入社したいと思ったきっかけは、会社説明会で実際に建設現場を見せてもらったことでした。建物の1階1階を、様々な人たちが協力して組み立てる。コンクリートだって、最初から固いわけではなく、その場で枠を組んで流し込んで時間をおいて固める。未だにこんなにアナログな業界があるだろうか…。建設業における省人化が進まないのは業界の問題点として挙げられますが、私はこのアナログな業界にロマンを感じて会社に入社したいと強く思いました。

建物は、どれ1つとして同じものがありません。入社後、配属されたのは横須賀の現場でした。あの仮囲の中に私も実際に足を踏み入れたのです。中では、より良い建物を建てようと熱い思いを持った人たちが集まり、連日遅くまで仕事をしていましたが、不思議とみんな苦ではない表情で仕事をしています。目に見えないものを形にすることの難しさ、大変さ、そしてやりがい。コンクリートが打ちあがってきて、建物の高さが上がってくると、それまでの苦労も吹っ飛ぶ。いざ完成した建物を見ると、当時の大変さや苦労が蘇ってくるし、あの時、頑張ってよかったとも強く思えます。

最初は更地だったところに突如と目を引くものが出現し、時に人々の生活を変えることもできる。ないものを形にすることの面白さ。私は今後も自分が関わった建物に関して、人々が何事もなく使っている姿を見て、色んな思いを思い出します。

建物には、言葉にできないほどの思いが詰められています。あの仮囲の中では色んなドラマがある。時には、この壁はどんなふうに作られたのかな、どういう苦労があったのかな、と想像してみてください。そこには、日々いいものを作ろうと仕事に励む人々の想いが込められています。

そういった想いをもって働ける会社に入社できて、良かったと心から思っています。異動先の新天地では逆境にいますが、また仕事が楽しいと思えるように、私も熱い思いをもって仕事に励もうと思います。