◆ビッグマック指数
英国・経済誌エコノミスが発表しているビッグマック・ランキングがある。
すなわち各国で販売されているビッグマックを介して、その国の総合的な通貨の購買力を国際比較するもので、57か国を対象に、年2回発表している。
消費税や農業補助金の水準など各国ごとに異なる事情を考慮しない、単純かつ荒っぽい一種の理論値ともいえる購買力平価だが、妙に生活感覚に近い。
2022年1月時点の数値(1ドル=115.23円換算でのランキング)をみてみると、日本は390円(=3.38ドル)で、57か国中、なんと33位になっている。
円換算で示したビッグマック価格の上位国をみると、スイスでは804円、米国669円、ユーロ諸国平均571円、豪520円、タイ443円、中国442円、韓国440円、ポーランド396円などが日本よりも高くなっており、日本のビッグマックはタイや中国、韓国よりも10%以上安い値となっている。
日本よりも安い国ではペルー387円、パキスタン385円があるが、これらはほとんど日本と同じ価格であり、日本円の購買力はペルー、パキスタンの通貨並みと言える。しかし、足元では135円近傍と本年1月時点より円安がさらに進んでおり、日本のビッグマックランキングはさらに低下したことになる。
なお、調査対象国のうち、ビッグマック最安の地域として現在紛争中のウクライナが280円,ロシア201円となっている。
このビッグマック・ランキングは単にビッグマックのランキングみならず、賃金水準も同じようなランキングになることを示している。
◆IT人材難
最近ではDXばやりだが、日本企業ではIT技術を有する人材の調達難が表面化しているようだ。最近、新聞が報じているところでは、求人倍率は営業職が2倍強、企画・管理職が5倍であるのに比べ、IT技術職は10倍程度となっている。
また、日本のIT業界でもこうした職種の賃金が多少上がり、新入社員の初任給40万円という声も聞かれ始めたが、GAFAの新入社員は1500万円のところもあるとされ、大きな格差が生じている。
国内でのIT人材育成の遅れから、人材供給がショートしているが、国内で調達できない場合、外国から人材を調達する必要がある。
外国人が日本で仕事をする場合、「言葉の問題」もあり、またジョブ型になっていない採用制度などがネックになっていることも確かだが、賃金水準が低いことも悩ましい問題であり、諸外国との格差是正は進んでいない。
また、困ったことに、日本人のIT技術職を希望する新卒者に内定を出しても、辞退する者が増えているという。深刻な問題だ。
◆過剰適応
1980年から90年代にかけて、日本が輝いていた昭和時代。まだその時の制度が支配的で、バブル期の成功体験者ほど意識が当時から切り替わっておらず、バブルの時を基準に判断する癖が抜け切っていないようなケースも多いのではないか。
最近の日本を見ていると「過剰適応」という言葉を思い出す。
温暖化に過剰に適応し、我が世の春を謳歌して巨大化した恐竜。
しかし、その当時最強だった恐竜は、寒冷化になると適応できずに絶滅したのだ。
ダーウィンは言う。
「生き残ることができる者は強い者ではない。また、賢い者でもない。唯一生き残ることができる者は変化できる者だけだ」と。
◆国際的なプレゼンス
控えめな国民性ながら、独特な精神文化が根付き、奥が深く、外国人を魅了してきた日本。円が高い時代は外国人からの憧れを多く集めていた。
モノが安くなったニホン、賃金水準が下がったニホン、通貨が安くなったニホン。
これ以上、日本の発言力が低下し、このまま国際的なプレゼンスが薄れていくことのないことを願う。
(学23期kz)