続・人間ドックのすすめ③

私は昨年(2021年)2月、人間ドックを受けた。

腹部大動脈瘤が見つかった。昨年7月、大学病院で大手術を行った。

続いて精密検査で冠動脈(心臓を動かす大切な動脈)に重大な疾患が発覚した。3か所が閉塞寸前という。今年(2022年)1月、大学病院で手術を行った。

◇白衣のお迎え

 大手術が終わった。私は大学病院の個室で横たわっている。体には何本もの管が付けられている。胸部からは出血が続く。

夜。高熱を発した。夢を見た。

―冬の日、私は九州の実家にいる。その日は九州には珍しく、大雪が降っていた。

私は庭に出た。

おや、だれか、いる。

祖母(故人)だ。白い着物を着ている。私と目が合った。微笑むことはない。無表情。なにもいわない。沈黙している。

私は雪景色を撮影しようと、いったん、家に戻り、カメラを探した。

だが、カメラは見つからない。しかたなく、再び、庭に出た。

なんと、祖母が同じ場所に立っているではないか。

突然、祖母はくるりと後ろを向いた。門を開け、黙って出ていく。

私はついて行かなかった。

 人生の最期にあの世からお迎えが来るという話はよく聞く。だが、ほんとうにお迎えが来るとは・・・。あのまま、祖母について行ったら、どうなっていたのだろうか。

◇リハビリ

 手術のあと、病棟でリハビリを行った。体に点滴などたくさんの管がついている。身体を動かすのは大変だ。だが、ベッドに横たわっていれば、回復が遅れる。

リハビリに励む。まず、ベッドから起き上がる。病室の椅子に座る。

座ることもリハビリの一環だ。さらに点滴を付けたまま、病棟内を歩く。肺機能回復訓練も1日3セット行った。若い看護師が「こんなにリハビリに熱心な患者さんはそういません」とほめてくれた。

 【1月22日】

順調に回復している。医師が足、腕、腹部についていた管を全部抜いた。

身体が一気に自由になる。シャワーも解禁された。おかゆの食事も始まった。

医師は「リハビリの効果があって回復が早い。まもなく退院できるでしょう」と微笑みながらいった。

【1月26日】

退院の日。妻が迎えに来る。タクシーでマンションに帰った。

昼食は妻の手作りの親子丼。おいしい。食後、妻の付き添いでマンションの外周を散歩する。マンションの友人たちと出会った。手術の成功と退院を報告する。みな、喜んでくれた。夜は鴨汁つけうどん。酒はまだ、飲めない。

シャワーを浴び、ベッドに潜り込む。心地よい眠気に誘われた。

◇自宅療養

 退院後、1か月は自宅療養だ。医師が具体的な指示をした。

  • 酒は当分の間、禁止
  • コーヒーは1日1杯
  • 水は1日2リットル飲む(相当な量だ)
  • 車の運転は禁止
  • 肉はおおいに食べる(手術で失われた血液を増やす)
  • 散歩を心がけ、距離を徐々に伸ばしていく
  • 重い物を持つのは禁止・・・など

私は素直に指示に従った。

1か月後、大学病院で診察を受けた。医師が微笑んでいった。

「数値がすべてよくなっています。お酒は飲んでいいですよ。現場復帰して、ばりばり仕事してください」

 私は3月から現場復帰した。元気に仕事をしている。酒もおおいに飲んでいる。これも人間ドックを受けたおかげだ。

みなさん、人間ドックをおすすめします。

 (東京支部 S)

追記

※大手術の結果、心臓から動脈にかけて、血流がきわめてよくなったようです。酒を飲むと、足の甲や指がピンク色に染まります。学生時代にもどったような気分です。