Y・Yさんが投稿した「私と演劇鑑賞(1)」を楽しく読みました。
広島で公演されたテント劇場は臨場感があり、虜になったーと書いていました。
あの記事を読んで、青春時代の記憶が蘇りました。
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1970年代、演劇界は野心的なテント劇団がものすごい勢いで活動していました。通称「紅(あか)テント」や「黒テント」などがトラックにテントを積み、全国を旅して公演していました。
実は山口大学にもテント劇団がやってきたのです。わたしは実行委員会の一員として公演の裏方を担当しました。
劇団の大型トラックが吉田キャンパスに到着しました。巨大なテントを荷台から下ろします。高い支柱を立て、テントを張る。劇団員だけでは手が足りない。学生たちもテント設営作業を手伝いました。情宣活動も行いました。
さあ、公演が始まります。テントの中の客席(地べたに座る)は満席。若い熱気が高まっていきます。テントの支柱を駆使した躍動感あふれる舞台は圧巻です。大きな歓声と拍手がわき、公演は大成功でした。
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さて、今夜の宿はどうするか。
数多い劇団員をホテルや旅館に泊める余裕はありません。
思いついたのが経済学部(亀山キャンパス)の一角に建つ通称「迎賓館」です。賓客が経済学部を訪れたさいの宿泊施設(だったと思う)でした。
劇団員はその夜、「迎賓館」に宿泊したのです。
翌朝、わたしは様子を見に行きました。劇団員は起床し、洗顔をすませたころでした。わたしは女優さんたちとにこやかに会話していたのです。
そこへ、K教授が現われました。ふだんは冷静な先生ですが、なにやら険しい表情です。
迎賓館に怪しげな連中が泊まっているーとの通報があったようです。
おぼろげな記憶を元に会話を再現してみます。
「困るよ。許可なく、外部の人を勝手に泊めちゃ」
―えっ、許可がいるんですか。
(経済学部当局の許可は得ていなかった)
「これからは、ちゃんと、事前に届け出るように」
―はい、すいません。
K教授は学生の過激な活動や、やんちゃな言動にも理解を示す先生でした。
おかげでその場は丸く、納まりました。
劇団員は心地よく、次の公演地に向け、旅立っていったのです。
思えば、おおらかな時代でした。
(元山口大学経済学部生 S)