思い出のワンゲル①【合宿編】

山口大学経済学部同窓会 鳳陽会東京支部

【11月トピックス】

 炎天下の登山道を一歩一歩喘ぎながら稜線をめざしてひたすら登る。合宿初日、荷物は食料など一番重たい状態で30キロは優に超えているだろう。山大ワンゲルは皆平等な重さの荷を担いで合宿に臨むが、体力の劣る下級生にとって苦しみは大きい。パーティーは一番体力の無い(その日調子の悪い)者のペースに合わせて進んでゆく。他の者はペースが遅いので少しゆとりも出るが、調子を崩した者にとっては、限界ぎりぎりの苦しみが続くことになる。皆誰が一番先に体調を崩すか、疑心暗鬼の中で探り合いを続ける。そして調子の悪そうな者が次第にはっきりしてくると、俺ではなかったと心からホッとする。だがそんな顔はおくびにも出さない。

 サブリーダー(サブリー)はパーティーの先頭に立ち、後ろのペースに気を配りながら、ルートファインディングに忙しい。ちょっとした木の折れ具合、人工的な枝の切り口、小さな枝につけられたテープ、石にペンキで塗られた印など、決して見逃してはならない。国土地理院発行の5万分の1の地図とコンパスを時折取り出し、方向は合っているか、地形は合っているか、確認しながら進む。体力の無い下級生は疲れから頭を垂れがちだが、サブリーはそうはいかない。常に顔を上げて進む。体力的に強く余裕がないと務まらない。

 パーティーリーダー(パーリー)は、パーティーの最後尾で皆の様子を見ながら進む。

道を間違えていないか、メンバーの体調はどうか、要はパーティーメンバー(パーメン)の安全と健康全てに責任を持つ。休憩の時に、調子の悪そうな者を指名してポリタンクの水を

出させる。皆で回し飲みして空っぽにすることで、荷物を軽くさせるためだ。これは夕食の食材を出させる時も一緒だ。気象状況により、明日行動するか沈(その場にとどまること)するかの判断もむつかしいし、天気の急変やメンバーのけがや病気など、アクシデントにどう対応するか的確な判断が求められる。責任が重く気の休まる時がない役割だ。

 それだけに、無事に下山した時の嬉しさは半端ではない。リーダーは事故がなかったことにほっとするし、下級生は何とか山を歩き通せたことにほっとする。夏合宿では信州の松本近郊に集中地を設けていて、上級生やOBが待ち構える。すべてのパーティーが下山後に集まってくる。最終日はキャンプファイヤーで盛り上がる。だがまだ合宿中なので禁酒である。翌日合宿解散後、信州松本駅の構内では、酔っぱらってリュックサックを枕に寝込む部員が多数転がっていたものだ。まだカニ族も多いのんびりした時代だった。

【元ワンゲル部員A】

山口大学経済学部同窓会 鳳陽会東京支部

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