ソリの合わない二人の英傑 その4 勝と福澤の語学対決

山口大学経済学部同窓会

鳳陽会東京支部

【2023年9月トピックス】

外国語での会話能力は外国語の座学(読み書き)とは異なるものだ。語学力、特に会話能力は腹が座り、行動力があり、茶目っ気があり、また時々ホラを吹くような性格を有する方が上達が早く、特に陽気な米国人に受けが良い。

片や規則やルールにうるさい真面目な人物、またどちらかというと物事を理詰めで考える理性派や理工系の人物は外国語での会話がどうも苦手な傾向にあるようだ。

福澤先生は論理派で生真面目な性格だ。こうした人物は往々にしていい意味で外国人との会話で身に付けたい、良い意味の「いい加減さ」に欠ける。その点外国語での会話が思うに任せない者が多い。

◇クララの日記  ―福澤先生の会話力

外国人招聘講師の娘で、勝海舟の3男梅太郎の嫁となったクララの日記に、福澤先生の具体的な英会話が出てくる。日本語交じりの英語で、洗練されたものとは言えない。

クララは「日本語がわかる私限定の言い方なのだろうか?」と優しい解釈をする。

福澤先生の英会話に接し、私と福澤先生の距離が急速に縮まり、福澤先生が愛すべき身近な人物のように思えてきた。

他方、勝海舟。

勝海舟について回る「オレが、オレが」、あるいは「(ウィットのある)ほら吹き」とも呼ばれた勝。しかしこれは欧米人と対話する際、ある種必要な素養だ。

◆余話 坂本竜馬と外国語

ここにもう一人、勝海舟と似た男がいる。坂本龍馬だ。

では龍馬の英会話能力はどうであったか。残念ながら、記録としてはあまり記録に出てこないようだ。

しかし、海援隊では隊内の機密情報にかかわる意思伝達は「英語での会話が必須」とある。意外にも龍馬は結構な英語使いだったのかも知れない。

咸臨丸に通訳として同船したジョン万次郎は土佐の漁師。龍馬と同郷だ。同時代に生きた龍馬はジョン万次郎とも会ったことがあるという説もある。ジョン万次郎から米国の事情を聴くと共に、万次郎から英会話のコツを教えてもらっていたかもしれない龍馬。両者の仲介をしたのが勝海舟だったのではないかと想像を働かせるのも面白い。

(学23期kz)

クララ ホイットニー

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