山口大学経済学部同窓会
鳳陽会東京支部
【2023年 9月トピックス】
◆進学や就職
進学する学校を決めるときは親と相談し、親の意向を踏まえて決めるのが一般的だろう。親が教育費を出すからだ。
学生が就職する場合でも、ある程度親の意向を踏まえて決める。
社会人としての経験が浅い学生は、長年社会人として競争社会を生き抜いてきた親の見識が自分の就職先を決めるうえで、ある程度参考になるし、「会社」に入り社会人として独り立ちすることで、親を安心させたいからだ。
このように人生の転機には親の意向がある程度反映される。就職を決め、働き始めると、親はひと安心することになる。
◆転職と親の意向
しかし、リストラの憂き目に会う場合は仕方がないが、何らかの都合で転職する場合、親は反対に回ることが多い。
労働統計をみると日本の転職率は5%と米国の半分以下となっている。転職率とは裏側の関係にある勤続年数の統計を見ても日本は平均11年、米国は4年となっており、欧州は日本に近いか、あるいは両国の中間に位置している。
最近では転職者数が多少増えているとはいうものの、諸外国と比べて転職する割合は少ない。
ここには子息の転職について親の慎重な姿勢が影を落としているのではないか。
昭和の時代、「年功序列、終身雇用」のもとで働いてきた親世代は、子の転職に対して否定的な態度をとる場合が多いと思われる。
この時代、この転職に際して「我慢が足りない」、「こらえ性がない」というのが一般的な親の見方だったように思う。というのも、昭和の時代は年功序列・終身雇用の世界に身を置いた世代であり、転職の相談を受けた際は、「(年功制のため)転職は不利だ」と答えるのが一般的だった。
実際、親世代は親や会社の先輩、また上司からそう言われて育ってきた。
確かに昭和の時代、そこにはある一定の合理性があった。
真面目に職をこなして行けば毎年給与は上がり、確実に昇進していったからだ。
日本が輝いていた「旧き良き昭和の時代」は一度就職した入った会社に尽くす愛社精神が美徳とされた。
そこでは中途採用は一般的ではなく、中途採用者は振り出しからスタートするため不利に扱われた。今でこそジョブ型労働への理解が進みつつあるが、当時は優秀だからとして、あるいは会社にとって必要な人材だからとして、中途入社の人材はほとんどおらず、前の会社に居ることができなくなったワケありの人物と見られる風潮さえあった。
また、制度面を見ても、昇進や年金制度や退職金に関する規約、退職金にかかる税制も長期継続就労に有利な設計になってきたのだ。
そもそも年金制度では転職先でも適用可能なポータブル型になっていなかった。
日本では学び直し、そして転職に消極的とされるが、そこには転職に不利に作用するこうした制度的な要因も介在していたのだ。
しかし、こうした古き良き時代が崩れ去ったのはバブル崩壊の影響が顕在化し、インターネットが商業化され「IT革命」が言われ出した1990年代半ばからのこと。あれから30年近く経つのだ。
最近では変化が加速度的に早くなっている。こうした時代、我々が昭和時代に聞かされた親から子へのアドバイスは、時には誤りとなるかもしれない。
(つづく)
(学23期kz)