山大・花の経済学部 その2

山口大学経済学部同窓会

鳳陽会東京支部

【2023年 10月トピックス】

柴田敬先生は戦前マルクス経済学と近代経済が相入れないと見られていた時代に、マルクス経済学の命題を「ワルラスの一般均衡理論の簡略版」(柴田)を用いて検討している。しかも論文は、世界中の経済学者がアクセス・検討できるように英文で発表している。

今から思えば画期的な取り組みと言える。

スイス・ローザンヌ大の経済学初代教授ワルラスは、古典派の客観的価値論から消費者の行動を決めるものは、客観的価値ではなく効用という主観的価値によるとして消費需要の関数を描き始めた。これが近代経済学の端緒ともいえる。

さらに同大学でワルラスの後を継いだパレートも一般均衡理論の普及に努めたことにより、ローザンヌ大が一般均衡理論の一大派閥・ローザンヌ学派を形成することになり、柴田教授も大いに啓発されたのだろう。

スイスの古都で、レマン湖畔のほとりの小さな町、ローザンヌ。世界の経済学者たちに影響を与えたローザンヌ大。

阿部廉氏(学27期)(前稿参照)によると、柴田先生は京都大学から転任し、山大経済学部の学部長就任にあたって、山口大学を日本のローザンヌ大としたい旨の抱負を語っておられたという。柴田先生は8年在籍されたが、学生運動によって同構想は挫折。その後に山大を辞任された。

山口は小さな西の都、古都だ。

地形的にはスイス・ローザンヌよりドイツのハイデルベルクの方が山口に似ている。

ハイデルベルクはドイツ最古の大学。ハイデルベルク大も評判が高い。人文系に有名教授が多かった。ヘーゲル、ウェーバー、ヤスパースなど。

鳳陽会の先輩の中には経済学部が亀山から平川に移転するに際し、「平川が東洋のハイデルベルクとして発展することを期待」するとの願いを述べておられた先輩もおられた(「花なき山の・・・323話」(西岡吉春・元中部アンモニア工業社長))。

山あいにある山口大。サイバー空間が発達した現在では、地理的なハンデはかなりの程度克服できる。山大は総合大学であることを活かして文・理の知が融合した「知の拠点」となってほしいものだ。

経済物理学、経済心理学など経済周りの分野を取り込んだ学際的な研究も大いに結構じゃないか。

山大には「時間学研究所」がある。いうまでもなく経済学の中で「時間」は重要なファクターのひとつ。経済学部が「時間学研究所」と溶け合うのも在り方のひとつ。AIも活用しながら知恵を絞り、経済学の新しいパラダイムの展開を試みて欲しい。

(学23期kz)

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