山口大学経済学部同窓会
鳳陽会東京支部
【2023年 10月トピックス】
◆クラシック・オペラ評論の大家
松本矩典(のりつね)先輩。1931年、萩生まれで学・3期生だ。
日本ビクターに入社し、クラシックレコード制作に携わり音楽コーディネーターとして活躍された。音楽評論家と称されるが、ご本人は音楽研究家と呼ばれたかったようだ。
産経新聞のクラシック音楽専門月刊誌 Mostly Classic に記事を連載し、クラシック、中でもオペラに造詣が深い。
1995(平成7)年には「オペラ 名作名演全集」(写真参照・講談社+α文庫、約750頁)を刊行している。
オペラ精通者として、東京音楽大学で長年にわたり特別講座の講師を務めた。
◆母校・山大経済学部での講演
松本先輩が生前、1998(平成10)年に経済学部主催の「教育講演会」で講演された時の記録がDVDの形で残っている。
その講演はそつのない、しっかりした語り口で、オペラの魅力について講演時間を超えて熱く語られた。
プッチーニのマダムバタフライ(蝶々夫人)を題材に、指揮者、主演、演出、衣装の組み合わせで、作品が観客にどのような感動や興奮を与えるか映像を見比べ、オペラを鑑賞するときのツボを学生たちに、かみ砕いて説かれていく。
DVDの映像も活用されたプレゼンで、紹介されたのがオペラの本場ミラノ・スカラ座で演出が浅利慶太、蝶々夫人役のソプラノ歌手が林康子、衣装・森英恵というチームで臨み、歌劇に和のテーストを織り込み、大成功を収めた公演の模様が披露された。
講演会の中で、学生に伝えたいメッセージとして以下の二点を挙げておられる。
- 今は昔と異なり、「組織」ではなく、「個」の時代。個を大切にして、個人がやりたいことをやり、個人それぞれがスペシャリストたれ。
- しかし、単に「個」を重視することにとどまらず、友人を多く持て。悩めるときに相談できる友人を持て。
また、山口にまつわる音楽関係のエピソードがひとつ紹介された。それが日本最古のピアノの在り処。
そのピアノが山口・萩にあるとのことだ。
これはシーボルトが国外追放になる、いわゆるシーボルト事件で、国外追放間際に、長州藩御用商人熊谷五右衛門義比(よしかず)に贈ったものだという。
五右衛門義比はかつて長崎でシーボルトの診察を受けたことがあり、シーボルトは五右衛門義比が西洋の薬、書物のほか西洋の器物蒐集の趣味があること知っていたのだ。このためシーボルトは、所有していたピアノを、知人を通じて彼に贈ったという。
そのピアノは、今では熊谷美術館の所蔵になっている。
◆文化面で大輪の花
山大経済の諸先輩方が政官界、教育界、メーカー、商社、金融機関で多く活躍された中で、松本先輩はクラシック音楽、総合芸術とされる「オペラ」評論の大家として存在感を示され、大輪の花を咲かせた。
ご自宅には水準を超えた音響機器やDVD再生機が残っており、音大を中心に音楽関係者がいまだ訪れることがあるという。
(学23期kz)