幕末官僚の優れ者(その2)岩瀬忠震②

山口大学経済学部同窓会

鳳陽会東京支部

【2024年 5月トピックス】  

◆ハリスとの条約交渉

ハリスはしばしば岩瀬に反論されて答えに窮し、また岩瀬に論破されて条文を何度も改めたとされる。

ハリスは英国を始め欧州は油断すると怖い存在であると認識させ、その前提で米国との通商条約交渉を有利に進めていこうとするが、岩瀬はそうしたハリスの欧州の悪口をたしなめることもしている。

◆英国人の岩瀬評と岩瀬のジョーク

英国とも安政5年7月18日に日英修好通商条約が締結された。

ひと月前に日米間で通商条約が締結されており、交渉は比較的スムースに行われたようだ。

日英通商交渉・締結の当事者となった第8代エルギン伯爵の秘書・ローレンス・オリファントは日本滞在中の記録(和訳書「エルギン卿遣日使節録」)の中で、岩瀬忠震のことを「彼こそが日本で出会った中で、最も愛想の良い教養に溢れた人物」と記している。

またここにでてくる岩瀬のジョークがある。

交渉の際、会食を重ねるが、日本側は出されるハムとシャンパンをとても好んだようだ。

「ハムとシャンパンに猛然と襲いかかる」ほどの勢いだったという。

そこで岩瀬が放ったジョーク。

「条約にはハムとシャンパンの味がしないようにしないといけませんね」

一同大爆笑だったという。

◆日本人の岩瀬評

日本人の岩瀬評はどうか。

橋本左内「急激激泉の如く、気力盛ん、決断力あり、知識あり、断あり」

木村芥舟「資性明敏、才学超絶、書画文芸、一として妙所至らざるなり」

若くから学業に秀で、ユーモアに富み、頭の回転は群を抜いていたそうだ。

ああ羨ましい。

こうした幕臣がいたからこそ難航する条約交渉が「曲がりなりにも」まとまった。

こうした優れた幕臣がいたことを忘れてはいけない。

しかし、悲しいかな将軍継嗣問題もあり安政の大獄で免職となり、44歳で病没する。

・・・

惜しいかな、何ともあっけない最期となった。

(学23期kz)

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