山口大学経済学部同窓会
鳳陽会東京支部
【2024年 8月トピックス】
このシリーズでは、幕末から明治にかけて外国人が見た日本の日常の光景を、彼らの日記等から紹介している。
◆タタール人・イブラヒム
時代は下るが、1909年(明治42年)に来日したロシア国籍タタール人のアブデュルレシト・イブラヒム。
ムスリム導師(イマーム)であり、ジャーナリスト、旅行家でもある。
イブラヒムはイスタンブールに活動拠点を置き、帝政ロシア下のムスリム民族推進運動も行っていたが、時の政権が民族活動の取り締まりを強めたことでロシアの近くから離れ、モンゴル、満州、日本、東南アジア、インドを廻る旅に出た。
廻った国々の中で、日本が気に入ったとみえて、半年間と比較的長く日本に滞在し、庶民の生活の中に身を置き、明治の日本を観察している。
彼の日本観察がこれまでとは異なり、非西洋・非キリスト教の視点であったため好評だったこと、またロシア帝政に批判的であったこともあり、アジア進出を目指す日本の各団体から招かれて講演をし、伊藤博文や大隈重信などの大物とも会見している。
◆日本滞在記「ジャポンヤ」
彼の日記には非西洋・非キリスト教者である彼が、長い歴史を経てかたち造られた「素の日本人」の日常や行動様式に触れ、体験をし、観察したことが書き留められている。
・治安は完璧であり、職業や身分に関係なく新聞や本を読むこと、チップを要求しないこと、家族で芝居を見に行くことに特徴を見出しており、郵便ポストが便利な制度であると評価している。
また、宗教には熱心ではないとしながら、身分の低い者まで政治や経済のことを論じることに驚いている。
この日記は、日本人の姿を彼の同胞であるイスラムの民、トルコ系の民に日本人観を紹介した本であり、彼の日本人観は今日のトルコや中央アジアのトルコ系の人々の日本に対するイメージとほとんど変わっていないという。
つづく
(学23期kz)