山口大学経済学部同窓会
鳳陽会東京支部
【2024年10月 トピックス】
2024年度・ノーベル賞の発表が続いている。
ノーベル賞を受賞すれば、その栄誉もさることながら、受賞者には賞金が与えられる。
この賞金はノーベル財団が支払うもので、賞金額は毎年変動があり、
2024年の賞金額は1100万スウェーデンクローナ(以下SEKと略す、10/10現在、1SEK=14.35円、約1億6千万円)となっている。
◆年によって変動する賞金
過去の推移を調べてみると5分野ある賞のうち、1つの賞につき1000万SEK前後が授与される。
(単位はSEK)
2001年以降1000万
2012年~2016年800万
2017年~2019年900万
2020年~2022年1000万
2023年 1100万
2024年 1100万
毎年変動があるということは、どういうことか。
運用のパフォーマンス次第で、賞金額に変動が生じる。
財団は独立性を保つため、民間からの寄付や、また国からの寄付さえ受けていないため、財源を稼ぐには、自前の基本財産を運用するほかはない。
1つの賞で約1000万、5分野(①生理・医学、②物理、③化学、④文学、⑤平和)で5000万SEKの資金が必要となる。
ノーベル賞の授与は100年以上も前、1901年から行われており、当初はA.ノーベルの遺言に基づき低リスク・低リターンの債券で運用していた。
しかしその間、2度の世界大戦や経済恐慌もあり、そうした運用では基本財産が枯渇する懸念も出てきたことから、高リスク・高リターンでも運用できるよう制度を変更している。
◆ポートフォリオ
2023年末時点のノーベル財団の基本ポートフォリオ(2023年末)をみてみると、
株式55%
債権10%
不動産10%
オルタナティブ25%
(ヘッジファンド、未上場株への投資)
となっている。
5割以上を株式に投資しており、オルタナティブにも25%投資、不動産にも投資するなど、分散投資を行っている。
ここで行われていることは分散型の積極運用ということだ。
こうした投資によって、インフレ調整後で年率3%のリターンを目指している。
なお、同財団の基本財産は2022年末で58億SEK(約832億円)となっている。
◆日本の年金運用のポートフォリオ
日本の公的年金資金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のポートフォリオは以下のとおりとなっている。
2023年度末で
国内株式24.3%
外国株式24.9%
国内債権26.9%
外国債券24.9%
すなわち、株式と債券がほぼ同じ比率、国内と外国もほぼ同じ比率となっており、ここでは5割程度が内外の株式で運用している中で、長期的な年間収益率の目標を「賃金上昇+1.7%」としている。
絶対に枯渇させてはいけない年金基金でも行われていることは、消極運用ではなく、分散型の積極運用だ。
そうしないと、インフレ昂進下の経済では実質価値が損なわれるからだ。
◆「経済学賞」
我々が学校で学んだ経済学。
「経済学賞」については、もともとノーベルの遺書にはなく、ノーベル財団から賞も賞金も出ていない。
経済学賞はスウェーデン王立銀行が同行の創立300年を記念し、ノーベル財団に話を持ち掛けることによって授与することとなったという経緯があり、このため歴史は浅く1968年から授与され始めた。
ただ、メダルも賞金額もノーベル賞と同一で授賞式も他の受賞者と同様に行われるが、ノーベル財団はこの賞に言及するとき、「ノーベル」という称号をつけず、単に「経済学賞」と呼び、他の賞と区別しているという。
「ノーベル経済学賞」は俗称ということだ。
また、スウェーデン王立銀行の「経済学賞」に充てる基金のポートフォリオを承知していないが、おそらくノーベル財団などと同様、株式にも投資する積極型の分散投資ではないか。
特にインフレに向かう経済状況下では、基本財産の実質価値が損なわれかねないからだ。
(学23期kz)