随筆 横目で眺めた経済学 ➅サムエルソンのマルクス評

山口大学経済学部同窓会

鳳陽会東京支部

【2025年5月 トピックス】

◆マルクスの解

古典派の労働価値説を受け継いだマルクス。

労働の価値が詰まったのが商品。

しかし商品ができたとしても、売れなければ物事は完結しない。実現できない幻だ。

ここでは需要側が決定的な役割を果たす。

需要側が納得した「価値」が金銭で払われ、売却が完了。

ここで商品の価値が初めて実現される。

商品が需要サイドと出会う場、そこが市場だ。

結局、マルクスは商品の労働価値は「マーケットによって決まる」、すなわち、「需要と供給」によって決まるとした。

ということは、マルクスは労働価値説を諦め、「需要と供給」説に降参した形になったのではないか。

◆こうしたこともあり、マルキストのオスカー・ランゲは労働価値説を放棄した。

また、マルクスを理解したケインジアンのジョアン・ロビンソン。

彼女は労働価値説に否定的で、マルキストは労働価値説を捨ててしまってもいいと断言している。

学生時代に覗き見た安部先生の授業でも、安部先生はジョアン・ロビンソンに言及される場面が多かったように思う。

ただどのような文脈でジョアン・ロビンソンの名前が出てきたのか覚えていない。

◆サムエルソンのマルクス評

他方、近代経済学の大御所・新古典派「総合」のサムエルソン先生は随分とマルクスを評価している。

教科書である「サムエルソン経済学(懐かしい都留重人訳)」で、サムエルソン先生はマルクスを「経済学者として、哲学者として、歴史家として、また社会学者として”客観的評価”に値する人物」としている。

古典派の袋小路的な問題を追求し、またケインズ的不況の問題をケインズに先立って取り上げたとしている。需要と供給が一致しない場合が生じる過少消費説のことだろうか。

(学23期kz)

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