随筆 横目で眺めた経済学 21 人口減とベッカー教授

山口大学経済学部同窓会

鳳陽会東京支部

【2026年1月 トピックス】

◆24年の合計特殊出生率が1.15、東京都は0.96となり既往最低の値となった。

人口のトレンドは経済変動と異なり、静かに確実にやってきて、その流れが近い将来に反転することはまずない。

人口減少のインパクトは各方面に及ぶ。

足元の計数が狂うと、この先10年、30年、50年先の人口予想図が変わる。

当然ながら、先に行くほど大きな誤差が生じる。

経済はもちろんのこと、社会保障などの制度にも影響を与える。

賦課方式中心の年金給付は将来切り下がることにもなろう。

◆これまでに何度人口推計が下振れたか。

人口推計などは中位推計のほかに上振れる高位推計、下振れる低位推計もあるが、総じて期待を込めて楽観的な計数が多用される傾向がある。

社説では「一刻でも早く対策を」という。

地域も職場もと。

働き方改革、長時間労働是正、育児教育費の無償化。

これまで一体、何本の対策が打たれ、予算がいくら使われたのか。。

ほとんど効果はなかった感がある。

その度ごとに綿密に検証されたのか。

そうでなければ、税金の無駄遣いとなる。

岸田政権でも「異次元の少子化対策」と称する対策が打たれたが、効果が上がったとの声は上がってこない。

外国でも少子化の流れは止まっていない。

トランプ政権では、さぞや奇抜な少子化対策が検討されているのかと思いきや、昨年4月下旬に浮かび上がった策は5千ドル(75万円)ほどの「赤ちゃんボーナス」という陳腐なものだった。

◆ゲーリー・ベッカー教授

ミクロ経済学を武器に社会現象の解明を試みるシカゴ学派の大御所でノーベル賞経済学者のベッカー教授。

※結婚するか、しないのか。

女性は教育費を掛けて高学歴化し、広く社会進出を果たし、重責を担うポストで高所得を得る者も多く出てきた。

高学歴の女性には、結婚を先延ばしにしてキャリアを追求するインセンティブがある。

最近ではテレビで女性の大学教授の活躍が目に付くし、大企業でも女性のトップや重役が活躍する報道がなされている。

こうなれば、復職するにしても結婚や育児に機会費用は増える。

高学歴、高収入の職に就くほど機会費用は高くなる。

こうした状況では結婚が遠のくことになる。

※子供を持つか持たないか

また、ベッカー教授は子供の数と質の間にはトレードオフの関係があるとする。

すなわち、子供が少なくなれば子供一人にかける教育費は多くなり、子供を産み育てる費用が高くなり、費用を回収することが容易ではない。

こうした状況では、子供を多く産み・育てるインセンティブは湧かない。

◆周りを見ても結婚を決断するものが少ないとなれば、結婚に対する脅迫観念は薄れ、結婚せずにペットや押し活が常態化する。

インターネットに載っていたことだが、ある識者の見立てでは、「結婚の年収の壁」があり、この壁が2024年には550万円(中央値、以下同様)になったという。つまり、年収が550万ないと結婚を諦めると。

また「子供を持つ年収の壁」というのもあり、20代で525万円、30代で620万円になったという。

平均値ではなく中央値なので、より実態に近い値だろう。

実際、これ以下のものは結婚を諦め、子供を持つのを諦める者が多いということか・・・

◆子供を持つのは自由だ。実体験として大変だと思う。

カネもかかる。

授業料が無料になっても入学金、学校納付金、通学費、塾代、図書費、部活費、修学旅行積立金、小遣い費など。

カネのことは別にしても、子供を育てるのは大変だ。

まず五体満足で生まれてくるか否か。

そうであっても、子供には多くの懸念要因を克服する必要がある。

子供の時には感染症などの病気。

このほか、いじめ、不登校、学習障害、発達障害など各種障害、事故

高校・大学になると、犯罪を招く交友関係やアルバイト先の回避、就職問題。

私の同級生は一人娘を欧米の大学に何千万円もかけて留学させた。

そうした場合、親としても娘が一流企業に就職し、すぐに結家庭に入るのではなく、社会的にも活躍してほしいと願うのは当然だ。

何千万円も教育に掛けたのだから、親も親戚に誇れる一流企業に就職してもらいたいと願うのは人情だ。

多額の教育費を掛け、一流企業でスキルアップを図っていくこと。

ベッカー教授によれば、これが結婚の機会費用を高めるとする。

女性の高学歴化、社会進出は望ましいが、これがどうすれば少子化の要因にならないようにするか、知恵の出しどころだ。

(学23期kz)

故 ゲーリー・ベッカー・シカゴ大教授(ノーベル賞受賞者)

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