-山口大学発の銘酒-
◇「長州学舎」
長州藩の藩校ではない。私塾でもない。
酒である。説明は後に回すが、“山口大学”発の日本酒だ。山大生協等が扱っており、宣伝文句に「さわやかな香りで端麗辛口。すっきりとした味わい」とある。私も山大の先輩・同僚へのお歳暮に使ったことがある。
◇学生時代の日本酒
学生時代の私は「五橋」しか知らない。「ストーム」と称して学寮の各部屋を回る勇者が手にしていた一升瓶は二級酒の「五橋」。相当無茶な飲み方をしたせいか、あまり良い想い出はない。しかし、先日目にした山口の旨い酒ランキングを載せた記事では7位に入っている。山口の酒屋に立ち寄った折、「五橋」の評判を聞いてみたが、地元でなかなか人気があるという。あれから50年。質も上がってきたのだろう。
「五橋」もさることながら、ここ十数年来、東京では山口の酒の評判が良い。
◇獺祭(だっさい)
美食とワインの国・フランスで業界人をも唸らせ、世界的なブランドになった岩国・旭酒造の「獺祭(だっさい)」。オバマ大統領訪日時、安倍首相が土産として手渡したのは獺祭の「磨き その先へ」だった。
ブームになる直前の十数年前、一緒に飲み屋に入った友人によく問われたものだ。「獺祭?何と読むの」、「どういう意味か?」と。
◇東洋美人
再び安倍元首相に登場願う。プーチン大統領来日の折、長門での会食に用い、大統領が絶賛したという萩・澄川酒造の東洋美人「一番纏(まとい)」。飲み屋でも東洋美人は売れっ子だ。店のメニューに出ていても油断は禁物。決まって「今はない」、「売切れ」という返事が返ってくるのが通り相場だ。
◇その他、人気の銘酒
日本酒に詳しい同期Ⅿ君から教えてもらった雁木(がんぎ・岩国)や貴(たか・宇部)。ふくよかな香りとまろやかな口当たり。フルーティーで確かに旨い。しかし先述のランキング記事には既述した数々の「有名どころ」を抑えて、「金雀(きんすずめ・岩国)」、「天美(てんび・下関)」がそれぞれ1位、2位に入っている。
これまで聞いたことがない銘柄であり、どうも気にかかる。天美(長州酒造)の裏のラベルには杜氏として藤岡美樹女史の名がある。ますます気にかかる。
◇ランクの番外編
紹介しておきたい酒がある。「夢雀(ゆめすずめ・岩国)」だ。2016年に1本8万8千円で売り出した夢雀。ドバイのブランド系高級ホテルの日本料理屋では1本60万円、香港のマンダリン・オリエンタルでは1本20万円で出しているという。磨きは一割八分という。とうとう、そこまで来たか!
◇長州学舎で乾杯
さて、長州学舎に話を戻そう。2004年の国立大学独法化以降、稼ぐ力を求められた大学。山大グッズ創りの一環で2008年に出来上がり、2010年に販売開始と相成った。
【画像提供:山口大学】
県の農業試験場で開発された山田錦の系譜を継ぐ酒米「西都の雫」を山大農学部付属農場で栽培したものを用いており、醸造は萩の岩崎酒造に依頼したという。価格は本年秋時点で大吟醸(750ml)が2500円、純米酒が(同)1350円となっている。
鳳陽会同期の有志が集った忘年会でも、長州学舎で乾杯した時は愉快であった。
ついでに言えば、獺祭と東洋美人の贅沢なダブル飲み放題の忘年会をやったのも鳳陽会の同期会だったことを思い出した。
会場は東京タワーに近い鳳陽会東京支部近くの居酒屋で、宴席は高層階にあった。大きな東京タワーを視界に入れながら会が始まる。
長州学舎で乾杯、といきたいところだが、その店は持込み禁止でえ、残念ながら長州学舎の出番なし。
東京タワーのネオンに照らされた友の顔と顔、そして選りすぐりの山口の銘酒。
笑い声が響く中で、思いを馳せた先は山大の学生だったそれぞれの青春時代。何とも懐かしく、愉快な夕べであった。
(学23期kz)