「明けない夜はない」だが、夜は長かった。
「トンネルをぬけると雪国」しかし、トンネルも長かった。
約半世紀前、不合格に太鼓判押す教師の期待を裏切り、山口大学経済学部に合格。めでたく古都入りした。
当初仕送り1万3千円!寮のカレーライス80円、金はなくとも心は錦!の1回生―のはずだった。
創立90年のボロボロ鳳陽寮入寮。壁は穴だらけ、床はブカブカ、隙間風、窓から放尿なんのその、憧れの一人暮らしが始まった。
何も知らぬ18の春なのに、歓迎入寮コンパのどんぶり酒で死ぬ寸前。
小中高と「整列!前に習え!」でいつも一番前、いじめられっ子の幼少期。
巨漢外人レスラーの反則に我慢して、最後は空手チョップで勝利する力道山に憧れ、
無謀にも空手をやろうと考えた。
だが、寮の先輩がこういった。
「空手部なんか入ったら、卒業できんぞ。壁の穴はみな、奴らの拳の跡。やるなら
合気道。上品、女子もいる!」
女子もいる!!という重要ポイントに痺れ、一旦進む道を決定した。
その矢先、小柄でニコニコ優しい顔した空手部2回生が寮に勧誘に来た。
当時、他大学の空手部やワンゲル部のしごきで死亡事故相次ぎニュースになっていた。
私ー「入部しても、いやならすぐ辞められるの?」
先輩ー「君!仮にも国立大学だよ、紳士的・民主的、何の問題もない。一度稽古を見にいらっしゃい」
疑うことを知らない田舎のボンボンは、「なんや、寮の先輩の話と違うやんか!」とアリ地獄に真っ逆さま、経済学部の正面にあった空手部道場へ。
道場の端に正座見学、すごいのなんの、寸止めなんかとんでもない。
バッチン!ボコッボコ!殴るは、蹴るは!!道着は血だらけ、選手の一人は顔に大傷
(実はこの4回生は直前バイク事故で顔を怪我。中四国大会直前で特に過激な稽古中)
ムリ!無理!無理!!、来るんじゃなかった、すぐ帰らねば!!と
逃げるタイミングを計っていたら、バタンとドアを閉める音。あーヤバイ!!
長い稽古が終了。「ハイ、新入生紹介!」
泣く泣く居並ぶ部員の前に立たされ自己紹介。拍手!!
鬼の形相、副主将が「明日から来いよ。来なかったら迎えに行くけんね。」
こうしてめでたく入部、オス、オス、何でも押忍!!恐怖の理不尽生活が始まった。
主将は嘉穂高校名門柔道部出身。頬にチェーンで抉り取られた傷あり、眼が弱く普段は薄いサングラス、893さんも避けて通る。
下宿にお邪魔したが、壁には大きな国旗。北一輝の本が並ぶ。右翼結社??
超豪華ステレオでクラシック。初めてゴールドネスカフェをいただきました。
副将は経済、坊主頭で鬼軍曹、仏の2回生は彼に倍返しを誓いとても強くなりました。
母は「学生運動と山岳部は危険だからやめて。それ以外なら」と。
父は「運動部はいい、頑張れよ。」
人の気も知らんと、二人は賛成。
楽しい学生生活はどこへやら、わが身の不幸を嘆く肥満の一回生でありましたー続く。
次回は修羅奮闘編 お楽しみに。
(経済学部22期生 N)
注) 以上はフィクションで実在の人物、組織とは関係ありません。ーということにしておきます。
不適切な表現もありますが、作者の意図を尊重し、ほぼ原文のまま掲載しております。