灰色の高校生活を脱し、「君と~よく~この店に来たものさ~♪~♪」さあ薔薇色の大学生活がはじまるぞーのはずが、空手部に入部。わが身の不幸を呪うひ弱な1回生でした。
1. なんと理不尽な
この世の中、理不尽だらけ。でも、これほどとは・・・。
頭は坊主刈り。冬は詰襟黒服、夏は部の刺繡入りシャツ着用、革靴又は高下駄。
先輩への挨拶、返事は「オス!」「押忍!」のみ。
訳はーハイわかりました。全て従います。何も考えません。
新人が街で見た3回生に「押忍!」の挨拶をしなかった。「指導が悪い」と2回生が体罰を受ける。
(100m離れていても聞こえる大きな声で「押忍!」)
ある幹部の最悪のつぶやき
「彼女は作るな。強くなれん!」えエッ!うそでしょ。
(この幹部がもてないだけで、実は皆さんそれなりに頑張っておられました)
2. 虎の穴
タイガーマスクにも出てくる欧州に本当にあったプロレスラーの訓練道場。
稽古は柔軟体操、腕立て腹筋背筋、アヒル歩き、うさぎ跳び。永遠と続きます。
腹筋仕上げは仰向けに寝て、上級生が腹に飛び乗る。踏むんでなく三段跳びのジャンプ。
次は亀山外周ランニング、最後はダッシュ。竹刀を持った鬼が後ろに迫る。
肥満の私は毎回、大変でした。
ボカボカ日和の亀山公園、皆さん楽しい公園デートの横で基本稽古。
週に一度は女子短までマラソン。玄関で気合い入れて突き蹴り、ご迷惑かけました。
アッちっちアスファルト、砂利道、ガラス片も何のその、ずっと裸足・・・。
3. 変身
東大出の体育担当若手教授がおりました。
稽古以外はなるべく休憩を心掛け、必修の体育も稽古に備え仮病見学。
なんと、その日に教授が空手部の稽古を見学に。
翌日お呼び出しあり、教授の特別トレーニング実験生に指名を受けた。
稽古だけでも青息吐息なのに、飛んだり、跳ねたり、持ち上げたり。
お陰で20kg減量、入学時2千mだった12分間走は3千mに。
4.こんなこと、あんなこと事件
空手部第一期黄金時代の幹部、勉強が好きで5回生でした。
稽古中、相手の歯が折れて拳に入り骨まで損傷、ギブスして道場門前闊歩。
チンピラ数人に絡まれ、ひと騒動。運悪く、現場に学生証を落としていた。
ある日、下宿の周りに、報復隊が押し寄せているのを発見。その後、各所を転々と・・・。
それでも無事に卒業され、会社の副社長で活躍されました。
新入生は苦しい鍛錬と上級生のサンドバック状態、うっぷん晴らしに酒でも飲んで暴れるしかなし。
ある日のコンパの後、大勢で車道をふらふらしていたら、黒塗りベンツが急停車。
運転手が怒って何か言った。大騒ぎになった。( 私は見てただけです。 )
その後、夜の街を報復隊が我々を探しまわってしたという。彼らは広島から応援に来ていた同業の方たちだったらしい。
翌日、主将より「1年生は1週間謹慎、稽古なし!」ラッキー!!
(ストーム、お出入り禁止事件)
合法的にうっぷん晴らしするには、寮のしきたり、ストームが好都合。
深夜寮生をたたき起こし仁義切る。上級生下級生に関係なく、ご挨拶受けたほうは布団たたんで正座で返答。礼を失した者は制裁受けてもやむなし(と教えられた)。
ある夜、同級生が吉田寮でちょっとやりすぎ、全寮集会でつるし上げ騒ぎとなったが、付き添い主将の一喝で終焉。条件はストームお出入り禁止。
鳳陽寮でも鍵を閉めてマージャンしていたかわいそうな上級生。鉄下駄はいた連れがドアをけ破り、部屋主は震え上がった。(そのあとは酔っぱらっていて記憶にありません)
その前年、1年上も同様事件で鳳陽寮お出入り禁止。
なんとも懲りない面々でした。
そんなこんなで波乱の1年があっという間に過ぎました。
ボオーッとした肥満児が心も体も剥けました。
エッ!学業?そんなもんはとうの昔に捨てました。でも、卒業もしましたよ。
(山口大学経済学部卒業生 N)
※注 以上はフィクションで、実在の人物、組織とは関係ありません。―ということにしておきます。不適切な表現もありますが、作者の意図を尊重し、ほぼ原文のまま掲載しております。