どこへ行くニッポン

山口大学経済学部同窓会 鳳陽会東京支部

【10月 トピックス】

日本が長期停滞からなかなか抜け出せない。

社会・経済を中心とする各種国際比較統計では日本のランキングが毎年少しずつ下がり続けている。

日本の変調については1990年代以降いろいろな言い方で日本の弱点が指摘されてきた。

・「直線走では最強だが、コーナーでは方向を見失う」

・問題の放置が続き、反応できなくなった「茹で蛙」

・温暖化の時代に過剰に適応して巨大化し、寒冷期という環境変化に対応できず絶滅した恐竜が引き合いに出される「過剰適応」

◆停滞ではなく没落か

日本が戸惑う間、かつての中進国や途上国の所得水準が伸び、日本は相対的にかつてのような裕福な国ではなくなり、諸外国の日本を見る目も変わってきている。

最近の雑誌には、「停滞する日本」ではなく、また「変調する日本」でもなく、「没落する日本」というタイトルで特集を組む経済誌も出てきた。

天変地異の多い日本。外国人が日本の家屋を形容する「木と紙でできた家」は災害が起きると壊れ、倒れ、流された。災害に弱い。

しかし、弱いからこそ立て直しが利いた。

不平を言わず黙々と建て直す日本人を世界は称賛するが、これはこれまで幾度と繰り返されてきたことであり、日本人として当たり前のことであった。

こうした中、20世紀に入り、日露戦争を勝利で終えた頃から日本は世界で輝き始め、先進国の良いところを取り入れた「アジア初の列強国」と称された。

戦後の高度成長を経て、当時学生だった昭和48年(1973年)に迎えたオイルショックの時も、政・労・使の協調により、オイルショックからどの国よりも早く脱却し、世界の称賛を浴びた。

世界の称賛はまだ続いた。バブル崩壊前の1980年代後半には円も強くなり、1989年には世界の時価総額ランキング10大企業のうち日本からはインフラ系公企業2社(通信、電力)、銀行が5行、景社がランクインしたときもあった。

その後バブルが崩壊し、30年デフレに突入する。

◆経済の好況・不況と制度構築

日本の経済が好調な時は新卒一括採用、終身雇用、年功序列、OJTがもてはやされ、その方向に諸制度が固められていく。

経済が一転し、バブル崩壊・デフレの時代を迎えると、「経済的弱者」である競争力を失った中小企業を守り、また不況産業の雇用を守るような政策が打たれる。

日本の家のように脆弱な建物ではなく、嵐が来ても大丈夫な堅固な石の建物が建てられた。

こうした建物が立つと嵐には強いが、世の中の変化や変化から取り残される。

◆ガラパゴス

タコつぼで居心地の良い日本。

タコつぼの中では環境の変化に敏感に対応する必要がない。

こうする間にITに弱いままの日本、女性が活躍できないままの日本、英語ができないままの日本、大学のランキングでも低位のままの日本になった。

IMD(国際経営研究所)が発表する世界の競争力ランキング。経済状況、政府の効率性、ビジネスの効率性、各種インフラ等300以上の指標を用いて評価する。

発表開始の1989年から92年まで1位であった。その後徐々に順位を落とし、2021年のランキングでは2021年版では調査対象64か国中、31位となっている。

日本については

・「ビジネスの効率性」や「研究開発力」の急低下が日本の弱点

・強みとされてきた研究開発力は経営層が急低下。潤沢な知識資本

 も活用力に課題とされている。

◆新たな風はどこから

韓国のプロゴルフ界はスポンサーが少なく、ゴルフ場も、プレーヤーも少ないいわゆる「マーケットが小さい国」だ。

このため、プロは最初から世界を目指し、韓国の女子プロは、世界で活躍している。

韓国の芸能界でもそうだ。BTSや女性のユニットも世界で活躍し、日本は水をあけられている感がある。

ちょっと待て。

日本の若者が頑張っている。

松山がマスターズに勝ち、ハワイアンオープンも制した。渋野日向子も全英で勝ち、今年も残念ながらプレーオフに辿り着けなかったが、いい戦いをした。フィギュアスケートの羽生弓弦、スピードスケートの高木美帆、スキー・ジャンプの小林陵侑と高梨沙羅。スケートボードの堀米雄斗。最近では全米女子アマで馬場咲希が全米女子アマを制した。

将棋では藤井聡太がいる。

日本の若者の中で生じている地殻変動が、教育の在り方をはじめ、各界の旧い制度や慣行を変えていくことにつながっていくことを期待したい。

(学23期kz)

山口大学経済学部同窓会 鳳陽会東京支部

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