山口大学経済学部同窓会 鳳陽会東京支部
【10月 トピックス】
DXの続き
◆学校教育の現場
高校まではパソコンを用いた授業に不慣れな先生が多く、黒板派が多いという。
人的な接触が回避されるコロナ禍では、教育の現場でパソコン需要が高まったが、そのパソコンを返却する例すらあるという。
先生方はパソコンのスキルを磨くような学び直しを余儀なくされ、授業の進め方や宿題の出し方も従来とは異なる。教材の作り直しが求められ、余分な時間がとられることになるからだ。
また、インターネット上では各地域、各学校の先進的な取り組み事例が取り上げられており、そうした事例は取組みに消極的な学校に身を置く先生方にとって、大きなプレッシャーになっている可能性がある。自分が受け持つ生徒や生徒の親にはあまり知られたくない話なのだ。
なぜか。
取り組みの遅れがあからさまになれば問題化するからだ。
また、大学にとってはインターネットで世界の有名教授の授業が無料で提供されているサイトがある。
こうした中で、安くない授業料を払う学生を、いかに学校に惹きつけることができるかが大学に問われている。
先生にとっては、自分の専門分野の教育や研究とは別に、パソコンスキル、デジタルスキル、パソコンを用いたリモート授業スキルなど、デジタル関係の新たなスキルを高めていく必要があるが、そのハードルは決して低いとはいえない。
◆行政の現場
(以下は行政に身を置いたことのある筆者の感想)
パソコンが導入された直後は、配布用に手書きの文書をパソコンに入力し直したものだ。
また、パソコンの活用によりペーパレス化も目指されたが、ほとんどの幹部はパソコンに不慣れであった。また庁舎内イントラネットで決済を行う「電子決済」も試みられたが、それには膨大な量の文章をパソコン上で読み込んで電子押印により決済する必要があるが、パソコン画面上では文書を読みこなす上で書類の一覧性に欠け、また目が疲れやすいため、決済に携わる担当官一人ひとりがプリントアウトすることになり、結局ペーパーレス化は進展しなかった。
また官庁の手元にあるビッグデータの活用はどうか。
官庁が握るデータの有効活用が大学や研究機関、マスコミなど各方面から期待されたが、官庁側では生(なま)データが特定の個人や地域が特定されないような形に「加工する」必要があることから、官庁側は出したがらない。
ITシステム導入についても、システムに精通している職員はほとんどおらず、システムの更新、改善、改革に関する入札についても、仕様書作りで相当苦労した。
官庁の中にはメーカーからの出向者をいただいて、その場を凌いでいるところが多く、業者によっては若い時から定年まで官庁内の一室でIT関連スタッフとして従事した例もある。
また、今回のコロナ禍では特別定額給付金や雇用調整助成金のオンライン申請で多くの不具合が生じたほか、各省庁のデータ連携不足などが白日の下に晒された。国の統一的な規格・基準がないものが多くみられるのだ。自治体は自治体で、それぞれこれまで付き合いのあったIT業者と個別に繋がってきた歴史がある。この結果、緊急事態に際し、国として地方自治体を含めた統一的な対応ができない。ここには「行き過ぎた地方自治」のマイナス面が出ている。
サイバー攻撃回避にも自治体ごとに対応する例が多く、このため同盟国と防衛外交や防衛の連携を組む際に支障が生じる恐れがあることは内外の識者から指摘されている。
◆企業の現場
先進的にDXに取り組んでいる大企業も出てきたように報じられている。しかし、その数は限られている。
企業でDXが進まない背景として中間管理職が反対しているという話がある。
その中間管理職層には、デジタル化など新しいことを避ける行動様式が見られるという。減点主義だからだ。成功してもさしたる加点は付かないが、失敗すれば、大きなマイナスが付く。
50代の中間管理職では危機感が薄く、アンケートでも不安は感じていないというが、もうすぐ退職で、逃げ切れると思っているからかもしれない。
色々な資料やデータを見ても、年々国際的なランキングが落ちている日本。
国際的なプレゼンスをもう一度回復するためではなく、むしろ日本がこれ以上ランキングを落とさないためにも、世界で標準化されつつあるDXに国を挙げて取り組む必要がある。
さもなければ日本丸は本当に沈没しかねない。
(学23期kz)
山口大学経済学部同窓会 鳳陽会東京支部
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