偶然の一致(1)

(自転車泥棒)

山口大学経済学部同窓会 鳳陽会東京支部

【2023年5月トピックス】

若い時に、松本清張の作品が好きで、「点と線」をはじめ何作品かを読んだことがあります。
又、水上勉の「飢餓海峡」も印象に残っている作品の一つです。
松本清張の作品は偶然が重なって展開していくので、読んだ後は、自分が妙に用心深いというか、臆病になった記憶があります。
そんな偶然が重なる確率なんて驚く程低い筈であるが、小さなことでも気にして、仕事上のちょっとしたミスでも暴かれて窮地に立たされるのではないかと思った時期もありました。
水上勉の「飢餓海峡」にしても、篤志家の人が、ちょっとした新聞記事になり、そこから昔の過去が暴かれていくといったストーリーです。
私は、過去2回ほどこんな偶然が本当にあるのかと体験した出来事がありましたが、2回に分けて紹介してみたいと思います。

まず、ひとつは山口での学生時代に遡るので、もう50年位前のことですが、私はアパート生活をしていて、アパートの共用のトイレが水洗でなく嫌で、1.5キロ離れた山口市民会館の公衆トイレに自転車を利用してわざわざ行っていました。 
ある夜のこと、市民会館で用を済ませて出ると外に置いていた私の自転車がないではないか。
付近を捜したがないので私は仕方なく、とぼとぼとアパート迄、15分程度の距離を歩いて帰るとアパートの私の部屋の前のいつものところに自転車が置いてあった。
私はすぐにこれは、私の友達のいたずらであると直感し、誰のいたずらにせよ、一件、落着の思いであった。

ところがである。
翌日以降にどうも私のアパートの住民が私の自転車を使っている気配なのである。
そんな筈はないのにとの思いもあり、使用しないで様子を見ることにしたが、その後、荷台等少し改造して使われていたのである。
旧い自転車であり、お世辞にも他人がほしくなる自転車からは程遠かった。
当分、アパートの住民に使わせておいて、ある日、自分のものと思って使おうとした住民に対して、「それは誰の自転車ですか」と聞いたら、「私のです。」というので、「いい加減にしろ!!、勝手に使って!!」と。
詰問すると苦し紛れに友人からもらったという。
その人は、社会人であったが、その後、いづらくなったのか、4世帯のアパートを出て行った。
私は警察沙汰にするつもりは毛頭なかった。 
盗まれた私も驚いたが、盗んだその住民も卒倒する程驚いたであろう。
偶然の一致とはいえ恐い。
(学22期 Y・Y)

写真は山口市民会館

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