山口大学経済学部同窓会
鳳陽会東京支部
【2023年 8月トピックス】
『★第1話
カリフォルニア・シャワー♪[注1]を聞くと、無人島へ行った連中はあの筆では書き表すことができようがない強烈な悪夢を脳裏に、あたかも京都知恩院の大釣り鐘の中へ頭を突っ込みガーンと一発鳴らされたような思いを受けるはずである。人間が野性に戻ることはまさにあのような状態をいうのだろう。
朝、いつとはなしにむくっと起き上がると一番心が惹かれるのはメシの心配であった。とにかく腹が減る。この時カルチェラタン[注2]のモーニング定食が恋しかったこと!
「メシができたぞ~」
悲鳴とも聞こえる声があがる。野性に戻った連中、そこに存在する理念は【弱肉強食】のそれであった。一斉に右手に昨日使った割りばしを持ち、左手におかずを入れるおわん。我も我もと、砂糖にたかる蟻の如くおかずに殺到する。
三島がヒステリックな叫び声をあげた。
「押すな~」
真田がわめく。
「作ったもんが先や~」
まさに地獄絵である。
めしを食べ終えると人間の心から野性は去って行く。連中の顔にはパチンコでチューリップに玉が2個同時に入った時のような安堵の表情とも、マージャンでリーチ一発ツモの時に味わう満足感ともとれるエクスタシーが漂うのであった。
(第1話 完)
[注1]カリフォルニア・シャワー
サックス奏者、渡辺貞夫が1978年にリリースしたジャズアルバム、およびそのタイトル曲。島に滞在中BGMとして延々と流れた。
[注2]カルチェラタン
当時、山口大学正門から湯田温泉に抜ける県道200号線(山大通り)と椹野川沿いの県道61号線(山口小郡秋穂線/旧称平川バイパス)が分岐する古曽交差点そばにあった喫茶店。
★第2話
そもそも無人島などへゼミ旅行で行くなど山口大学経済学部広しといえど他のゼミであろうか。いわんや何々をや(反語法で”いやあるはずがない”の意)。
このような事態に陥った原因は?
いかなる背景のもとに成立の憂き目にいたったのだろうか。
先見の明があったのは有冨と古賀だったろうか。彼らは無人島反対派の急先鋒だった。彼らは無人島という言葉からくる殺伐とした、まるで徹夜でマージャンをして4人とも±0であるような雰囲気を感じ、信州は上高地へ行こうとする案を考え根回しを始めたが【鶴の一声】。先生が無人島賛成の意を表明するにいたっては
「のれんに腕押し」
「ぬかに釘」
「月夜に提灯」
「不可の後のレポート」
「クリープのないコーヒー」[注3]
「下尾の親にリーチ」[注4]
「カビのはえたなめ竹」
まったく無意味なものである。
上高地へ行くなどと言い出せば飯塚がこういうであろう。
「少女趣味やね~」
どっちが少女趣味であろうか。
かくして無人島旅行は現実のものとなり、計画は進められたのだった。
(第2話 完)
[注3]
昭和40年代に俳優・芦田紳介が出演したCMの「クリープを入れないコーヒーなんて・・・」というキャッチコピーをもじったもの。今はブラック愛好者も多く死語となっている。
[注4]
麻雀で親になったら無双と化す下尾9期生に対し、手牌/待ち牌を変えられない役で挑むこと。
★第3話
旅行とは出発する時が一番楽しいものであり、それはエロ本をこれから読もうとする時の、最初のページを開く瞬間のこれから起きるであろう事への期待と不安が混じった感激とも共通するものである。出発の時に南さん、前川さんが弁当を作って門出を祝ってくれたのにも感激したが、この感激は前者の感激とはまったく異質のもので誤解なきようにしてもらいたい。
弁当をもらったお礼としておみやげなどを買って帰るのが当然のことで、買わなかった我々は糾弾されてしかるべきだが、我々は一度野性に戻ったことで悟りを開いたのである。
悟りを開いた者はおみやげは買わないのである。
悟りを開いた者はゼミの発表には力を入れないのである。
このように悟りを開いた我々は、夜中に他人の下宿に押しかけ他人を起こす事を当然と思うのであって、その点恵谷はまだまだ悟りが十分ではなく、
「堕落しきっちょる~」
などと叫ぶのであろう。
(第3話 完)
★第4話
太陽が水平線に沈むとカーバイトライトに火がともり、特有のにおいが立ち込める。枯れた松の枝を集めたキャンプファイヤーの炎が轟々と立ち昇り、天を焦がす勢いである。海のかなたに浮かぶ漁火の明かりとは対照的な動と静の光の共演である。
このキャンプファイヤーの火を見ている漁船の漁師は何を思うのだろうか。(以下略)
(第4話 完)』(ゼミ内報より)
■■サマーキャンプ感想編2
『無人島に行って泳いだり、タコ・アワビ・サザエなどを採って食い、たき火を囲んで酒を飲み朝まで騒いだりといったサマーキャンプは思い出深く、大学生活の中で画期的なことでした。』(ゼミ誌第1号より)
過酷ですが楽しくもあったサマーキャンプで鍛えられた9期生でしたが、さらにゼミ10周年記念パーティという試練が降りかかるのでした。
『今一番困っているのはパーティのことであります。
本当は金もないし彼女もいないし出たくないのですが、出ないとゼミの単位をくれないそうなのでしかたがありません。』(ゼミ誌第1号より)
(つづく)
学27期 三島