山口大学経済学部同窓会
鳳陽会東京支部
【2023年 9月トピックス】
◇鉄の街の高校時代
私は九州の鉄の街、八幡で生まれました。
地元の福岡県立八幡中央高校に進学。剣道部に入部しました。放課後は毎日、激しい稽古です。さらに生徒会執行部の体育委員長に就任。秋の体育祭実行委員長を務め、高校最大の行事を仕切りました。
忙しい青春の日々です。中学時代に楽しんでいた将棋を指す時間はありませんでした。
さて、八幡の中学生将棋大会で優勝した少年は、N君です。N君は別の中学出身なのですが、同じ、八幡中央高校に進学したのです。高校には将棋部はありません。彼は独学で将棋を学んでいたようです。また、将棋好きの同級生を誘って団体戦にも出場していたとのことです。高校時代、彼と親しかったわけではないので、くわしくは知りません。
◇月刊文藝春秋に彼の名が
私は小学生のころから月刊文藝春秋を愛読していました。巻頭グラビアから最終ページまでじっくり読むのです。高校時代のある日、将棋コーナーを読んで驚きました。
「福岡県立八幡中央高校、N君が高校生名人に」
なんと、あのN君が福岡県代表として全国大会に出場。優勝したというではありませんか。地方都市の少年が独学で日本一の座を勝ち取ったのです。すごい男だ。私はその日から、彼の動向を注目することになったのです。
◇プロ棋士への道
大学受験の季節がやってきました。
N君は大学に進学しませんでした。上京し、将棋のプロ棋士を目指す奨励会に入ったのです。
奨励会には全国の神童、天才少年が集まってきます。勝ち星を重ねると、昇段していきます。最後の関門が三段リーグ戦です。熾烈な戦いに勝ち残った者だけが晴れて四段に昇段。プロ棋士になるのです。
しかも年齢制限があります。26歳までに四段に昇段できねば、奨励会を退会しなくてはなりません。とてつもなく厳しい世界です。
18歳の春。N君は東京へ。私は山口大学経済学部に入学しました。東京と山口は遠い。彼は果たしてプロ棋士への道を順調に進んでいるのか。現代のようにインターネットのない時代です。長い間、彼の消息を知ることはありませんでした。続く
(鳳陽会東京支部 S)