山口大学経済学部同窓会
鳳陽会東京支部
【2026年6月トピックス】
◆インフレ税とは
選挙になると、与党も野党も「減税」を公約に出してくる場合が多い。
本年2月の衆議院選(2026年2月)もそうだった。
同年年2月には国の借金(長期政府債務残高)が約1350兆円(2025年2月末時点)と過去最大になったと発表されたが、過去の政府の経済・財政政策でも、財政赤字が続く中、財政の健全化に向けた政策メニューが正面に掲げられることは、先ずない。
国民もそれを望まない。
なぜか。
かつては新税の導入や、既存の税目の増税で政権が倒れた場合が多く、政治サイドはこれを嫌うからだ。
しかし、最近の経済状況をみてみると、政府の「デフレ脱却宣言」こそ出ていないが、消費者物価(CPI)上昇率はここ3年ほど、前年比プラス3%ほどで推移しており、デフレが終わり経済は緩やかなインフレ体質に転換した感がある。
こうした状況下では、政府は増税を意図せずとも、実際上増税と同じような、税収増に恵まれることになる。
これがインフレ税だ。
◆デフレからインフレへ
インフレ体質に変わると、賃金(給料)は伸び、経済成長もプラスになる。
しかし、実際はどうかということになると、物価上昇率を差し引いた実質ベースで観察しなければ生活が豊かになったとはいえない。
特に給料はインフレに先行して上がることはなく、物価が上がった後に、後追いでしか上がらない。
しかも、給料の上がり方はインフレ分(物価上昇率)よりも下回るケースが多く、その場合、実質賃金上昇率はマイナスになる。
言い換えれば賃金が目減りし、生活水準が低下することになる。
また、経済成長率も、1年間に名目で3%成長しても、物価上昇率が4%である場合、インフレ分を差し引いた実質経済成長率はマイナス1%となり、経済は実質ベースで、むしろGDPが実質的に縮んだことになる。
◆現金の実質価値は目減り
では現金はどうか。
財布の中のお札やへそくりのタンス預金はインフレで実質価値が下がる。
利息の付く預金はどうか。
あるメガバンクでは、足もとの普通預金が0.3%、定期預金が0.9%程度となっている。
3%のインフレ下では定期預金の実質価値が年間0.27%も毀損されることになる。
◆増える税収
これに対し、税収は増えることになる。
モノの値段が上がれば、消費税も上がる。
デフレ時代と異なり、先行きものの値段が上がると読めば、早めに購入しようとし、企業業績も上がり、法人税も増える。
また個人でも賃金が上がり、所得が増えれば所得税も増え、累進税率のため、タックス・ブラケット(適用される税率の刻み)が一段上がれば、所得税の適用税率も一段上がることになる。
このようにインフレによって税収も上がり、政府のふところは潤う。財政赤字を抱える政府にとっては、願ってもない状況だ。
◆インフレ税の規模
インフレ税はどの程度生じているのか。
政府の債務が1000兆円あり、3%のインフレが生じた場合、政府の実質債務は、971兆円となる。
1000兆円÷1.03(3%)=971兆円
すなわち、1000―971=29兆円がインフレ税ということになる。
そこでこうした「インフレ税」をどのように活用するかが問題となる。
(つづく)
(学23期kz)

(2026年2月)
