会社忠誠心の低下 その2

山口大学経済学部同窓会

鳳陽会東京支部

【2024年 4月トピックス】

◇数字の解釈

前稿で述べた、日本人の会社忠誠心が国際比較で際立って低いというショッキングな調査結果の話に戻ろう。

こうした調査結果をどのように解釈すればよいのだろう。日本人は会社への忠誠心を失ったのか。日本人は堪え性がなくなり、怠惰になったのか。

確かにそうした見方も一定に市民権を持ち始めたのも事実だ。しかし、逆の仮説も成り立つのではないか。

すなわち、責任感を持ち、真面目に働く日本人サラリーマンのDNAは変質していない。日本人サラリーマンが変わったのではなく、会社員を入れる器、すなわち「会社」が変化に対応し切れておらず、その結果、会社員の意識や行動に合わなくなってきている要素も多分にあるのではないか。

思い出してみよう。日本人サラリーマンの姿を描いた言葉がある。「遅れず、休まず、働かず」。

また、外国人の間では、日本の会社は「できない社員にとっては天国、できる社員にとっては地獄」という話もあるという。

「低い」数値が示したものは

  • 海外との社内人事交流も増え、サラリーマンとして客観的な相互比較ができるようになったこと
  • 保守的で自己変革に後ろ向きである会社が、自分の身に合わなくなったことを相談し、表明できるカウンセリング、NPOの活動、SNSなどのツールが増えたこと
  • 転職や新たな職種に就職する人材マーケットが整備されてきたこと

この結果、優れた社員や、やる気のある社員が、合わない会社と積極的に決別するという例が増えたのだと考えられないか。

 ◇会社との付き合いは、結婚と一緒という説

世間体もあり、離婚を避けようとするのが日本人の性癖であり、国民性ともいわれる。

会社との縁を、愛情がなくなった夫婦でも一緒に居続ける「腐れ縁」という言い方もある。しかし、会社と社員の関係は結婚とは異なる。社員が去った後も会社は残るからだ。会社は残り、新たな社員を迎え活動を続ける。「腐れ縁」意識、これも自己のポテンシャルを自ら低め、結果的に会社の生産性の向上を阻む要因かもしれない。

◇「プラチナ」という働き方

昔は「モーレツ」という働き方があった。働き甲斐はあるが、残業が多く離職率は高い(なお、社会的な倫理意識が著しく低く、離職率が高いのが「ブラック」。これは論外)。

これではいけないということで、ホワイト企業も出てきた。ワーク・ライフバランスを考慮した企業だが、若者がやり甲斐、社会的な貢献度、また今後のキャリアパスや身につく専門性を考えた場合、不安も残るという。

そこで、働きやすい企業として「ゴールド企業」がでてきた。

また、会社と社員の目指す方向が同じで、老若男女が生き生き働働ける企業で業績も良い「プラチナ企業」というのも出てきつつあると新聞が報じている。その代表として会社のグループウェアを開発・販売するサイボウズが挙げられていた。

◇100年企業

日本には100年続いた会社もあれば、数百年、あるいは千年を超えて続く企業もある。こうした会社は、創立以来、会社の方針や経営手法を変えていないのか。

数百年続く酒造メーカーでは環境や顧客の好みの変化に対し、原料を変え、開発・改良を繰り返し、場合によっては伝統的な製造方法を変えるという。こうしたことは洋の東西を問わない。

「不易流行」。

すなわち、守るべきところは守り、環境や状況に応じて変えるところ、変革すべきところは変革し、時には伝統を壊すような大胆な改革に取り組んだからこそ、生き残ってきたのだろう。

(学23期kz)

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