令和の米騒動

山口大学経済学部同窓会

鳳陽会東京支部

【2025年7月 トピックス】

岡山支部 岡山Bさんの投稿

令和の米騒動、備蓄米の放出等で話題に事欠かない毎日ではある。

一連の米作りの作業に携わったことのない政治家が、官僚の事務方の資料に、またある筋のコンサルの提案に軽率に左右されたりすると怪しくなる。

(現場を深く知る、現場の声に耳を傾ける。セレモニーとしてでなく)

もとより、このコメ不足の時に「家には売るほどお米がある」と口にしてしまう、農水族には信頼が厚い政治家でもどうかとなる。

米作りには様々な工程がある。ある時、農機具メーカーの営業マンが言つた。

「農業はある意味”百”の才能(百人の知恵)を持ち合わせていないと上手くいかない、百姓(百人の知恵)の生業である」と。

そう言われれば、種から苗、苗から稲、機械について、天候について、肥料について、農薬について、害虫、稲の病気について、土壌、土質について、農業土木、農業会計について等々、主だったものをあげただけでも、それを個々に極めようとするとあたかも総合大学の感がある。

「壁がある!だから、いく!」の宣伝で、2018年日経広告賞も受賞した企業のホームページには、その昔の米作りの過程を上手く纏めてあったので、長くなるが後掲してみよう。

種籾の選別から始まり、お米を収穫した後の藁細工のことまで記載されており、一連の流れが俯瞰できる。

通常稲の生育は、水稲(すいとう)と言う形をとることが多い。つまり、稲は水田に田植えをし、途中の工程では、水の管理をしながら、根(株)を太らせ、稲の背丈を伸ばし、稲の穂が出て、花が咲き、成熟期、黄熟期を経て、実りの秋を迎える。

その過程で最も大切なのが水の管理であると言われている。将に水稲なのだ。

田圃一杯に水を張り、溜め、ある時期は途中で水を落としたりする。また稲の成長途中に田圃の中に立ち入り、溝切作業と言ったひと手間ひと手間を加える。

それは除草と土用干しを兼ね、またその後再び水溜をしたとき、その溝によって、水が全体の面によくいきわたるようになる。その手間は何もしない水田に比べ、何倍にも豊かな水田を保つこととなる。

(特に今年のような高温、そして水不足も懸念されるときは)

一方、籾米をいきなり水田に直播し、後の水管理もせず、籾本来の生命力に任せる栽培方法もある。育苗、田植えの省略により稲作の大規模化・低コスト化・省力化のためのキーテクノロジーとして、有望視されている技術とも言われている。しかし、昔ながらの米作りの視点からするとあまりに田圃に、稲に負荷をかけすぎているのではないか…

昭和の終わり時期に地元にいた米作りがうまいと言われていた年配の伯父さんは朝夕自転車で田圃を見回るのを日常としていた。そして、気になる所では自転車を止め、田圃の水面に手を差し出して、水の量、その温度を確かめていた。きっと、その裏には前述の百姓としての知恵で、今後の天候、雨量の予測をもして、調整していたものと思われる。手を差し出すことにより、水の量、また温度から”田圃の声”を聞いていたのかもしれない。

ここまでくると何処か人材育成にも繋がる様にも思える。

蛇足

温室育ち、また稲にとって過剰に環境を整えることが、丈夫で実りある稲の成長につながるとは言い難い。むしろ、敢えて「獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす」

今の時代だと少し上席にある人が後進の指導に強く出ると「パワハラ!」「パワハラ!」と言われかねない時代でもあろう。しかし、後の時代での成長に必要な事項は、適宜、時には辛い判断をしながら”千尋の谷”も避けない時もありそうだ。

昔百貨店で”魚沼産のコシヒカリ”が何種類か販売されていた。同じ”魚沼産のコシヒカリ”なのに表示されていた価格には倍半くらいの価格差があった。

何故ですか?と売り場の店員さんに問い合わせると、同じ魚沼産と言っても水系(水質)によって、最上級のブランドでも米の味に差が出てくるんですとの答えだった。

農家の人がすべてそうだとは言えないが、お米作りについて、ある話を聞いた。

自宅で消費するお米は、水系は源流に近いところのもので、そして手間だけど出来れば天日干しの稲架(はぜ、また、はさ)掛けのお米を自家消費していると。

種籾(たねもみ)の選別と種まき→鍬(くわ)や鋤(すき)を使った「田起こし」→さまざまな鍬(くわ)を使った畦(あぜ)塗り→馬鍬(まんが)が活躍した「代掻き(しろかき)」→正条植えによって変化した「田植え」→桶や水車を使って行った「水の管理」→「草刈り」のために開発されたさまざまな農具→自家で作られていた施肥(せひ)→毎年、夏に行われた「虫追い」→中干し(土用干し)と稲の開花→鎌を使った手作業の「稲刈り」→天日での乾燥と稲の運搬→時代とともに変化した「脱穀」するための道具→さまざまな道具を駆使した「籾の選別」→臼を使った「籾摺り(もみすり)」→玄米をついて糠(ぬか)を取り除く「精米」→農家の生活用品になった「藁細工」→餅を供えて収穫への感謝

(筆者は、小学校時代に上記内容の「精米」の項以外は大人の真似事であったかもしれないが体験したことがある。今は田植え機による田植えは苗の田植え作業にとどまらず、一工程の中に追肥、除草材の粒剤散布により同時にこなしている)

写真解説

①溝切作業まで実施した水田 灌水をしないと水が維持できない条件の厳しい田圃
②溝切作業未実施水田 水利がすぐそばにある
③水管理が十分でない水田
 同じく水利はすぐそばにあるが水管理が足らない 

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