山口大学経済学部同窓会
鳳陽会東京支部
【2025年7月 トピックス】
◆トランプ劇場
同盟国を含めた一斉関税引上げ、米国民の分断をもたらす大幅減税断行、金融政策への介入(FRB議長の進退)、大学への財政支援凍結、また国際的にはエルサレムへのイスラエル大使館移転、地球温暖化など国際的な協定からの離脱。
このほか、世界の警察官をやめモンロー主義に向かうのかと思いきや、イスラエルへの積極加担、ロシア・ウクライナ問題への介入にイラク空爆と縦横無尽な策を繰り出すトランプ大統領。
当人は気分が良いに違いない。
誰も咎める者がいないのだから。
◆いきなりパンチ
関税引き上げの例。
3桁の国を相手に関税上げを敢行した。
外交儀礼などには一切顧みることなく。
クラスメイトをいきなり殴るようなものだ。
殴った後、出方によっては交渉に応じるという非常識なスタイルだ。
非礼極まりない。
ブラフをかませた後は引いてみる。
「TACO」と言われているが、チキンアウトではない。
単なるディールに過ぎない。
最初は敢えてディールで高めのボールを投げておき、相手が了承すれば「Done!」。
そうでなければ、後にゆっくりと調整する。
朝令暮改とも揶揄されるが、この柔軟性たるやチーム・トランプの真骨頂だろう。
もともと、高めのボールを投げているのだ。
この過程はディールそのものと言っても良い。
◆交渉相手国は・・・
交渉相手の交渉スタンスはどうか。
特に我が国の交渉スタンスはどうか。
機敏に対応しているか。
相手国の主張を黙らせるような切り返しをしているか。
相手に響くような交渉のタマを用意しているか。
「●●だけは絶対に飲めない」という国内票を意識した、頑なな交渉態度でよいのか。
そもそも我が国は、政府の特別チームとして米国と交渉を行う体を成しているか。
参院選前だから動けないのか・・・
・・・このように疑問点はあまたあるが、これらについて私見を述べるのは差し控える。
◆初めての交渉マターに非ず
日米貿易赤字、特に自動車の問題については、何十年も前から交渉してきており、ノウハウも相当蓄積しているはずだ。
また、今、米国から持ち掛けられたのは、関税マターだけではなく、安全保障も含むより包括的なものだろうが、これについても日米間の安全保障、防衛問題について今回初めて議論される問題ではない。
最近では安全保障関係が流動的になっており、これを機会に再検討すべき事態になっている。
中国の東シナ海、台湾付近での軍事拡大が目立つ。
北ではロシアがおり、北朝鮮もいる。また、両者は軍事協力しているというではないか。
隙あらば数ミリづつでも迫ってくる。
こうした中での我が国の安全保障問題も考える必要がある。
日米安保で、トランプ大統領は「片務的」としているが、基地提供もしており、10年前には安保関連法成立で「片務性」の問題が解消に向かった。トランプ発言の認識不足、勉強不足を日本の公式見解をもって、なぜ咄嗟に指摘し、認識不足を正さないのか。
国際情勢は変化している。特にアメリカは変質した。
トランプ大統領が変質させたのではなく、オバマ大統領が「世界の警察官」を辞めると宣言したのだ。
ドイツもエネルギー供給国として正面対立を避けていたロシアへの認識を変え、とうとう防衛強化にを大きく舵を切った。
我が国としては、ドイツをマネしろとは言わないが、中国の軍事攻勢、ロシア・北朝鮮の動き、こうした中での米軍による防衛プレゼンス後退という状況を踏まえ、、自分のアタマで熟考する時が来たのではないか。
米国への過度な依存からの脱却について模索する話だ。
米の問題・・・米国から買う「米穀」問題も、数十年来、何度も米国から申し入れされていたイシューだ。
◆正攻法による正面突破の姿勢で
今後の対米交渉では、正面から自由貿易正の正論を主張し、トランプ政策の非を正すのはどうだ。
米国を除くG7もEUも、そしてアセアンも韓国も賛成するぞ。
中国だって賛成だ。むしろ中国はこのところ欧州と融和的になっているではないか。
もちろん自由貿易を標榜する国際機関・WTO(世界貿易機関)も諸手を挙げて賛成してくれる。
米国が頑なに自由貿易を捨て、安易で無謀な高率関税を振り回すなら、変質した米国を外して自由貿易陣営を組み立て直すというのも有力な選択肢のひとつになると思う。
こういう状態になれば、米国も関税の防御壁で身を固めることは止め、こちら側になびいてくるはずだ。
米国も単独で生きて行けないのだから。
(学23期kz)
