「日本人論」の欠片 その11

山口大学経済学部同窓会

鳳陽会東京支部

【2024年 11月トピックス】

◆ほんとにそうか

日本に長く住んでいる外国人が「日本の食生活の豊かさ、多種多様な全国各地の商品の多さに比べて、日本人の行動が画一的なのは不思議だ」と述べていた。

日本人は画一的か、同調型の国民か。

本当に画一的なのか。

あるいはそうみえるだけなのか。

◆米国での実験

二次大戦直後、米国で同調する程度を図る面白い実験が行われた。社会心理学者ソロモン・アッシュが行った簡単な実験だ。

まず回答者A君の手元に(例えば)高さ10センチの棒グラフを描いた紙があるとしよう。そこで問いが出され、同じ長さの棒グラフはどれかと問われる。

問いとして示されたのは長さが①7センチ、②10センチ、③13センチの棒グラフ。

正解は言うまでもなく②だ。

しかし、ここで回答者を惑わす仕掛けが組まれている。

同じ部屋で10人が同じ問題に回答するという設定で、嵌められる被験者はA君のみ。

残りの9人は仕掛け人だ。

最初の回答者が、答えは①の5センチと間違った回答を出す。次の回答者も①の5センチと続き、A君は9番目に答えることになっている。

次は、新たなターゲットとしてB君は呼ばれ、同じ事件が繰り返される。

この実験で、仕掛け人の9人に同調して誤った回答を出した被験者の割合(同調率)は何と25%だったという。結構な同調率だ。

その後も同種の実験が、異なる地域、異なる年で繰り返され、平均的な同調率は25%だった。

◆日本での実験結果

同種の実験を1970年代の日本で行った米国の研究者がいる。彼はルース・ベネディクトの「菊と刀」に影響を受けた研究者で、日本での実験ではかなり高い値が出ると見込んでいたが、日本での値は25%となり、米国と変わらない値が出た。

この時の被検者は慶応大生だという。

鳳陽会東京支部の並びにある慶応大。

その実験の回答者になってくれた慶応大の学生諸君生に拍手を送りたい。

◆先の大戦中、日本人は画一的な集団主義という意見もあったが、しかし戦争中は、どこの国でも一致団結が基本だ。

戦争をしているときは日本でも、米国でも、欧州でもそうだろう。

戦時中に、みんなと違う行動、みんなと反対の行動をとるものは政府や警察からにらまれ、実際、日本では「非国民」の扱いを受けた。

日本人を、とてもひと括りにはできない。

実にいろいろな人がいるのだ。

◆あるラジオ番組で読者の声を紹介するコーナーがあるが、その意見は実に多様で深く、洞察力に優れている。

解説者より、よほど気の利いた意見が多く寄せられて、いつも感心させられる。

みんなは世の論調にすぐになびき、流されるのかと思いきや、そうではない。しっかりした意見が多いことに驚く。よほど新聞の解説者より鋭く、バランスもとれている意見が多い。

自分の頭で考え、分析、整理しているのだ。茶目っ気も添えながら。

しかし、そうした考えを日本人は、なかなか表に出さないのだ。

つづく

(学23期kz)

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