山口大学経済学部同窓会
鳳陽会東京支部
【2025年10月 トピックス】
◆ケインズに代表される伝統的なマクロ経済政策は、「合理的な予測」によっても、経済学上の批判にさらされることになった。
ノーベル賞を取ったロバート・ルーカスのからの物言いである。政策効果を見込んで政策を打っても、長期的には「予想」が合理的なら政策効果が出ないとする、いわゆるルーカス批判だ。
◆例えば、政府が減税策を出すとする。ケインズ流の解釈では財政支出した分は消費性向が高いほど乗数効果が大きくなる。
しかし、ここに「予想」を持ち込むとどうなるか。
例えば政府の減税策が講じられても、政府は後々増税により、減税による財政赤字の分を埋めると個々人が予想すれば、家計は減税分を消費せずに貯蓄に回し、その結果、財政出動の効果が失われるとする。
あくまでも、そうした予想が個々人の経済行動に及ぼすという理論的な話だ。
◆ルーカスは政策が発動された際の家計(ミクロ)の「予想」行動をモデルに導入することで、これまで有効とされてきた政策が場合によっては無効になりうるとした。
これは「マクロ経済学のミクロ的な基礎づけ」(Micro Foundation)といわれ、何でもないようにみえるこうした「予想」、あるいは「期待」を入れ込んだ理論がマクロ経済の在り方を壊してしまった。少なくとも理論的には壊してしまった感がある。
「ミクロ的基礎付け」のないマクロ経済学は旗色が悪くなっているようだ。
経済学者の間でよく議論されている話で、経済学が精緻化していくと、こういうことにもなるのか。
◆しかし、よく考えてみると各個人が政府の施策や他国の反応、すなわち身の回りの環境条件、制約条件を完全に理解し、予測して合理的な選択をするという前提そのものは実際にはかなりの無理があるように思える。
「そういうこともあるかもしれない」程度のものではないか。
横目で見ていて、ここまで予測を入れ込んで強引に論じ、ケインぞ効果を否定するのは「行き過ぎ」ではないか・・・
と思うのだが。
(学23期kz)

故ロバート・ルーカス・シカゴ大名誉教授(1995年ノーベル賞受賞)
















