山口大学経済学部同窓会
鳳陽会東京支部
【2026年6月 トピックス】
◆政策効果の検証
これまで重要な社会問題に対して各種の対策が講じられてきた。
こうした施策は、予算をいくら使ってどの程度の効果が有ったのか検証されるべきだ。
しかし、これが難しい。
例えば少子化問題。
これまでに、○○プラン ○○戦略 ○○ビジョンなど首相が変わるたびに新たな対策が考案されてきた。
こうした新たな対策は過去の効果の有無につき、しっかりした検証を経たうえで戦略的に実施されているのだろうか。
検証作業がないと、判断がつかず、“wise spending” どころか無駄な支出、極端な言い方では「カネをムダに捨てる」といようなことになりかねない。
◆政策効果の測定
客観的な政策効果の検討はどのようにすればできるのか。
・国会での決算委員会での討議はどうか。
国会での質疑応答は答弁者が財政当局であり、経済対策が無駄な支出であったとは立場上言わないだろう。
・会計検査院の調査はどうか。
検査院の指摘事項は予算の使い残しであったり、また予算が違うところに使われていたというような指摘が多い。
それはそれで、重要なことではあるが、予算がきっちりその目的に使われていたとして、その政策効果はどうであったか、どの程度効いたかということについては触れられていない。
打った政策が果たして効果が有ったのか、どの程度効果が有ったのか客観的、定量的に測定しておかないと、次の施策が効果的に打てないことにもなりかねない。
◆仮説検定作業
なお、政策が講じられた結果、その効果が有ったか否かについて、「仮説の有意差検定」という作業を行う手がないわけではない。
検定はA群とB群、例えば出産支援プログラムを実施したグループと、実施しなかったグループのデータを比較する。
二つのグループで、政策の有効性の証明をするが、その際、背理法による手法を用いるのがミソだ。
すなわち、政策が有効であったことを証明したい場合、「政策が有効ではなかった(両グループに差がない)」という仮説(帰無仮説)を立て、その下で、ナマのデータが極端な確率(P値)を取ったとする。
その確率値(P値)が有意水準以下、一般的には5%以下になれば、帰無仮説を棄却し、反対の仮説(政策が有効であるという仮説、すなわち対立仮説)が正しいことを証明する方法だ。
そうすることで、95%のデータには差がある=因果関係があることになると考える。
しかし、こうした検定作業も、問題なしとは言えない。
取り上げるデータの期間の問題、この間イレギュラーな出来事があったか否か、A群とB群のデータが、原因と結果、すなわち因果関係にあるのか否か、注意深く見ないと誤った判断につながりかねず、神経を使うし、結構使いにくい。
◆独立機関
海外にはこうした各種検定を含め、政策の検証作業を実施し客観的な検証を行う独立的な専門機関がある。
特に米国では1960年代からEBPM (Evidence-based Policy Making)、いわゆるデータに基づいた政策に沿って各種政策が試みられている。その政策検証を担うスタッフは経済学の知識とデータ処理能力を持った経済学博士集団だ。
例えば米国には議会予算局(CBO)がある。議会予算局は議会に対して、予算に関する基本データや政策に関する情報を提供するとともに、予算に関する調査を行う党派を超えた客観的な独立機関だ。
日本でもデータに基づいた政策の重要性が叫ばれるようになったが、地に足がついていない感がある。
そうした作業を担うスタッフを見てみると、日本の役所では理科系の技官を除き、政策を扱うセクションには博士はおろか、修士を持ったスタッフもほとんどいない。また、政府としても各省庁から独立した専門集団を育成するような試みもなされていない。
このため、わが国は政策評価後進国といえ、こうした専門機関の早期設置が望まれる。
◆高い独立性
ここで重要なことは、こうした機関に高い独立性を持たせ、また出てきた結果についてはデータも含め、国民のもとに晒すべきだ。そうしないと、検定に恣意性があったか否か定かにはならないからだ。
こうした検証結果は公共物であるべきだからだ。
また、こうした機関が内閣府に設置されたとしても、調査結果が内閣府にコントロールされるようなことがあってはならない。
また、仮に○○省や△△庁が設置したとしても、その省庁の監督を受けるようなことがあってはならない。
こうした注文は言うは易いが、かなり難しい注文だ。
しかし、そうしないと、真に効果的な政策が打てず、いたずらに効果が不明な施策が累積的に講じられることにより、さらに財政赤字が積み上がるあがることにもなりかねない。
(学23期kz)



































