山口大学経済学部同窓会
鳳陽会東京支部
【2026年11月 トピックス】
◆柴田敬先生
澄み渡った秋の空に映える東京タワー。
昨年秋に行われた同窓会関係行事の後のこと。
懇談の場で、学4期の「I」先輩から柴田敬教授が書かれた本の話が出た。
柴田敬教授とは山口高等商業学校卒。
我々の先輩で、後に山口大学教授に就任、後に経済学部長も務められた。
鳳陽会東京支部で卒業期が一桁台の先輩同窓生を中心に柴田ゼミ生だった方がおられることは、何とも羨ましい。
◆柴田先輩の略歴
福岡市に生まれ、福岡商業高校から山口高商に入学し、さらに京都帝大に進学した。
京都帝大では岩国生まれで山口高商の先輩である河上肇にマルクス経済学を学び、また高田保馬から精緻な数学的手法を駆使したミクロ経済学、いわゆるローザンヌ学派の手ほどきを受ける。
また、次稿でも触れるが、米国ではハーバード大に研究留学し、シュンペーターのゼミ生となっている。
こうした研究環境から、マルクスのみならず、ケインズをも批判的に論じ、特に戦前では、世界的に名が知られた経済学者となった。
もちろん、論文も英語で書いた。
サムエルソンは「考慮に値するマルクス擁護論を1930年代に展開したのは柴田敬とオスカー・ランゲだけだった」と述懐している。
日本では無名であっても、世界では「著名な一流経済学者」だった。
◆「経済学は逆立ちしている」
先輩が在学中の時の柴田敬著の本を紹介してくれたが、本のタイトルが刺激的だ。
『経済学は「逆立ち」している』
この本を通販サイト「アマゾン」で検索してみるも、検索に引っかかってこない。
1952年の『山口経済学雑誌』に掲載されているものを商業出版したものらしい。
◆経済の法則を求めて
柴田(以下、敬称略)は、どうも経済の法則にこだわっていた感があるように思われる。
マルクスの有名な「利潤率低下の法則」というのがある。
このため、資本主義は、行く行くは崩壊するという根拠となった、という「法則」だ。
柴田はこの法則を検証している。
柴田の残した功績を大づかみで述べれば、①資本主義の宿痾ともいうべき「利潤率低下の法則」が成立しないという論証、もう一つは②「金基底率一定の法則」により資本主義に特有の恐慌の長期的な底入れ・回復が生じることを示したといえる。
いずれも「資本主義の崩壊」が避けられることを理論的に示した形になる。
この理論的な研究については山大で金融論を享受された貞木先生も功績を残されている。
また、実証的な研究については統計学の大家である篠原三代平・一橋大学名誉教授も論証に貢献された。
柴田の魅力は、経済学の大御所や、また一般的な論調に迎合することなく、自分の頭で愚直に、とことん考え、相手構わず納得いくまで質問した。たとえ外国人の一流経済学者であっても、ひるむことなく質問し、議論を挑んだ。
時に、相手がシュンペーターであれ、ケインズであれ、怯むことはなかった。
自分の「アタマ」で考え、流暢な英語でなくても愚直に、納得のいくまで大御所を質問攻めにした。
なかなかできることではない。
つづく
(学23期kz)



山口大学経済学部のスーパースター、K.SHIABTAを取り上げ頂きありがとうございます。
経済学は数字で把握出来るもののみを扱うと言う当たり前の前提で成り立っている。
つまり価格がついて売買されるもののみを扱っているため、貨幣信用を前提としている。この時、自家消費や家事労働、ボランティアや贈与が広範に行われる場合、これらは計算に入っておらず、いわゆる成長、つまり富の増大を把握出来ない。
信用が広範に崩壊した社会では交換経済の機能が低下し、社会はコミュニティの復興に舵を切る為、自ずと数字で把握出来る経済は縮小すると予想される。
経済学の限界を前提に生きなければならない時代と考えていたほうがいいのではと思う今日このごろです。
経済学批判万歳。