随筆 横目で眺めた経済学 ⑱非ケインズ効果

山口大学経済学部同窓会

鳳陽会東京支部

【2025年12月 トピックス】

◆財政と政治

現場にいると、財政政策は否が応でも政治の影響を受ける。

米国の財政学者ブキャナンが言うように、どんなに正しい経済理論に沿った政策でも政治状況によって大きく左右される。

政治と経済は密接に絡みあっている。

「政治経済学」といわれるゆえんだ。

事務方が最良と思われる策を策定しても、最終的な決定権者は政治の側になる。

◆非ケインズ効果

多額の政府長期債務残高を抱える日本。

度重なる経済対策が十分な経済効果を上げることができないのはどうしたことか。

教科書的に言えば・・・歳出拡大に伴う財政赤字拡大で増税が想定されるため、それに身構えるために消費を減らし貯蓄に回すことになり、また、金利環境も悪くなることから、企業の活動も制約されることが予想される。

ケインズ政策が利かない、あるいは効きにくい・・・

それならば、ケインズ政策の逆を考えたらどうか。

すなわち歳出削減・財政赤字圧縮を行うことを想定してみよう。

これが将来の増税の芽を摘み、場合によっては減税余地を生み出し、金融環境では、財政赤字の緩和から金融逼迫状態が薄れ、金利には下方圧力がかかることから、却って景気浮揚効果をもつのではないか。

実際、こうした政策効果が観察された国がある。

こうした経済効果は「非ケインズ効果」と呼ばれ、1980年頃、デンマークやアイルランドで観察された。

◆逆説的に言えば、非ケインズ効果が発現する環境が最も整っている国は、ダントツの長期政府債務残高を抱える日本ではないかと言えなくもない。

この日本でこそ非ケインズ効果が作用してほしいものだ。

財政赤字を削れば金利負担が減り、有効な施策に予算が回せ、金利も下方への動きが増し、経済活動にプラスの影響が出るようなルートが出現するような時が来るのではないかと期待している。

(学23期kz)

政府長期債務残高の国際比較(対GDP比) 出典は財務省

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