山口大学経済学部同窓会
鳳陽会東京支部
【2026年8月 トピックス】
◆同窓生が書いた秋穂での悲恋
4年前、このトピックスで書いたトピックス記事がある。
タイトルは「山口再訪 出会いし市井の優れ者」。
・・・山大ワンゲル部OB会長を務めていたという古谷眞之助さんのことだ(トピックス・アーカイブ2022年11月)。
この時のトピックスでは、古谷氏を次のように紹介した。
「著名人が山口を訪ねる際、地元の史跡を紹介する役として抜擢され、テレビにも何度か出演したという有名人だ。また、萩往還をガイドした際の風景をイラスト画にしている。また多才で、40歳を過ぎてグライダーの魅力にはまり、操縦免許を取得しているほか、歴史ものの著作物も多い」
今回紹介するのは、古谷さんの新作
「秋穂(あいお)心中異聞—小説「鋭武隊隊士・吉岡新太郎と雅」
という歴史小説だ。(2026年2月25日発行)
これは史実だという。
主人公は長州にあって維新を担ぐ諸隊(鋭武隊)隊士・吉岡新之助と商家の娘・雅との悲恋・心中話だ。
両者の墓が秋穂に残っており、史実を古谷氏の創作で繋ぎ書き起こした小説だ。

◆あらすじ
主人公の新太郎は商家の次男。7歳の時に保守派(俗論派)萩藩士・吉岡徳之進の養子となり、藩士として厳格に育てられていく。しかし、物心がつくと、勇ましく「尊王攘夷」を掲げる正論派に惹かれるようになり、育ての親・徳之進に背く形で家出を決め、諸隊(鋭武隊)に入隊する。
真面目で優れものの新太郎だ。隊で頭角を現し、中隊指令(中堅幹部)を任されるようになる。
ある時、駐屯を命ぜられ大坂で職務に就くが、そこで出会ったのが、商家の長女山邑雅だ。この二人はたちまちにして相思相愛の仲となる。新太郎が26、雅が21の時だ。
しかし間もなく新太郎に山口・秋穂での勤務が命じられる。秋穂に向かい勤務に精を出すが、雅のことがどうしても気にかかる。
雅も新太郎を想う気持ちは同じ。一刻でも早く新太郎の近くに身を寄せたいとの思いが日々募る。
雅は一人で盛りしていた商家を弟夫婦に任せ、新太郎のいる秋穂へ向かった。
新太郎は雅の大胆な行動に戸惑いはしたが、隊に休みを届け秋穂で雅と再会、お互いの思いを通じさせる。
しかし、新太郎は立場上いつまでも隊を空ける訳にはいかない。
かといって雅を大坂へ返したくはない。
この先どうなるか。
もともとは商家の次男の新之助だ。隊を辞めて雅と夫婦になり、大坂で商売をやるか。
しかし、今はサムライだ。武家と商家との婚姻は身分の違いから壁が高い。
正式な夫婦になるには両家の承諾が必要だったが、新太郎は家出をしており、養父から婚姻の許しが出るはずがない。
また、隊に戻っても、籍を入れないメオトは隊の中で認められない掟になっていた。
夫婦然として、しばし身を処した秋穂の旅籠。
行き詰った二人が選んだ道は・・・
この話、地元では「秋穂のロミオとジュリエット」と呼ばれているらしい。
墓が秋穂に残っている。
長州藩の公式記録には、新太郎は「除隊、病死」となっているという。

◆もう一つの悲しい話
この秋穂、国民宿舎「海眺の宿 あいお荘」が有名で、近くでエビの養殖をしていることから、エビ料理で知られている。
バスが通っているが、車を持たない者にとっては少し不便だ。
その秋穂荘が閉店する。山口市が「株式会社あいお」に、国民士宿舎の運営を委託していたが、明日9月1日から「当分の間、利用休止することを発表した。
理由は宿泊ニーズの変化や施設の老朽化、燃料費、食材費のコスト高によるという。
「私が事業を継ぐ!」と手を挙げた者は・・・
・・・いなかったのだろう。
「あいお荘」も墓となるのか。
無責任な言い方だが・・・「もったいない話」だ。
(学23期kz)


