随筆 横目で眺めた経済学 25・攻める季節の到来

山口大学経済学部同窓会

鳳陽会東京支部

【2026年4月 トピックス】

◆経路依存性

日本の競争力低下の要因として「経路依存性」が挙げられることもある。

以前はうまく機能した制度。

しかし、うまく機能すればするほど、時代の変化、環境の変化で一部を修正・改善しようとしても全体に影響が及ぶため、結果として改革ができない状態のことを指す。

しかし、日本の競争力の低下が起きた最大の要因はそこではないのではないか。

◆受け身の国際基準

品質基準の順守に後手になった日本。

かつて、日本の競争力が高かった時代、欧米企業が日本への競争力を高めるために導入したISO9000。

バブル崩壊以降は、何と日本が後追いするのが一般的になっていた。

攻めの時代の日本の産業競争力を規格化した国際標準化機構のISOシリーズの後追いでは、力が入らないし、面白くない。インセンティブが湧かない。

しかし、これは単なる現象面の結果だ。

問題の核心はそこでもない。

◆尾を引くバブル崩壊のトラウマ

バブル崩壊直前の1989年には、企業の時価総額で世界のトップ10位に日本の企業がNTTを筆頭に7社もあった時代があったのはご承知のとおり。

トップ50社では33社が入っていた。

30年後にはどうなったのか?

2018年時点での世界のトップ50社で、日本企業は35位のトヨタ1社のみとなった。

そして2025年11月末には、トヨタも消えた。

何があったのか。

◆守り

この間は日本経済がデフレの状態にあり、昨年末には為替も円安に振れた。

こうしたテクニカルな要因があったことは間違いないが、やはり本質はバブル崩壊の影響が強く残ったからではないか。

バブル崩壊それ自体ではなく、バブル崩壊によって経営が守りに入り、チャレンジしない姿勢が続いてきたことこそが問題なのではなかったか。

守りの姿勢とは何か。

負債を嫌い、投資を嫌い、攻めを軽視し、チャレンジしない臆病な経営姿勢だ。

キャッシュ重視、内部留保重視。

攻めたは良いが、それで転べばもちろん社内で、業界で、株主の間でペナルティーを食らうことになる。

攻めの姿勢を失うということは、従来の体制からも脱皮できないし、イノベーションにもやらない、DXもやらず、AI対応にも慎重になる。

もちろん、人事面でもチャレンジ精神旺盛な者にチャンスを与えず、守りに強い人材を重用したのだ。

バブル崩壊期を乗り越えて出世した経営者や会社幹部は攻めの人材が薄く爆発的な業績が生じることない。

生産性が上がらなかった大きな要因はここに在るのではないか。

◆個々人では優秀な日本人。

慎重な日本人。

日本人がビジネスで一度過ちを犯すと、攻めに溢れる姿勢がない限り、守りに落ちる。

日本人は、もともと攻めるDNAが希薄で、失敗を嫌う人種だということが生物学的に明らかになっているようだ。

これは直観的にもうなずける。

個々人が優秀でも、経営者・社内幹部や社内風土が保守化すれば、個々人の優秀さを開花させることなく、日本全体のパフォーマンスが落ちることになる。

◆潮目の変化

世はデフレからインフレの時代へ。金利のある世界へと変わった。

株価や地価も上昇。後追いではあれ、賃金もようやく上昇し始めた。

AI関係もマクロ経済だけでなく、ミクロの経営で大いに活用できそうで、攻めの経営に転換するにはいい環境が整ってきた感がある。

外資も含めたM&Aが盛んになり、経営者には外国人も増えてきたようで、日本人経営者のビヘイビアーの殻を打ち破ってくれることを期待したい。

銀行も金利高で体力が向上し、融資姿勢も積極化している。

この機会に、横並びの守りの経営から脱皮するチャンスが訪れたようだ。

長い潜伏期間を経て、ようやくその時が来た気配がある。

(学23期kz)

コメントを残す