随筆 横目で眺めた経済学 26・経済対策の効果 ①

山口大学経済学部同窓会

鳳陽会東京支部

【2026年5月 トピックス】

◆景気対策

世論調査の中で、最も関心が高いのが経済問題だ。

その中でも景気対策を求める声が多い。

一般的にマクロの景気対策では財政政策や金融政策が用いられる。

財政政策か、金融政策か。

あるいは両方か。

◆教科書的に言えば・・・

景気過熱を抑えるには財政政策を用いるより、金利の引き上げが有効だとされる。

利上げだ。

しかし、状況による。

景気が過熱しても、カネ余りで企業がキャッシュリッチな状態にある時には、利上げをしても効果は薄いことになる。

逆に、景気が悪い時には財政で景気浮揚を図るのが効果的だとされる。

かつては「カンフル剤」として実施された財政出動、いわゆるケインズ政策だ。

しかし、開放経済の下では財政政策はあまりよく効かないとされる。

マンデル・フレミング効果が出るからだ。

すなわち財政出動すれば、クラウディングアウト効果もあり金利が上がり、投資にネガティブな影響を与えるが、こうした要因を除いても、利上げに伴い自国の通貨価値が上がるため輸出にブレーキが掛かり、GDPを押し下げるというのが教科書的な説明だ。

◆政策の効果

しかし、昨今はどうか。

様々な要因から長期金利が上がっているが、為替レートはどうか。

円高どころか、円安が是正されていない。

この為替レートも、金利、世界との金利格差、遠い戦争と近い戦争など各種要因によって左右され、複雑に絡まり合い、このうちどの要因がどの程度為替レートの上下に効くのか確定的なことは言えない。

◆積極財政派は、大盤振る舞いの財政出動をしても財政は悪化せず、むしろ名目成長率が上昇し、その結果税収が伸びるため、積極的に財政出動すべしとする。

しかし、税収は名目成長率によって左右される。

そこで日本の潜在成長率をみると、どうか。

1%を切りって久しい。今では0.5程度だろうか。

人口減少化が続いており、0.5すら怪しくなっており、ゼロ近傍と計測する有識者もいる。

また、昨今の「年収の壁」のインフレ分を超えた大胆な引き上げは減税を意味し、租税弾性値を引き下げかねない。

財政政策の在り方も難しい局面にある。

◆財政目標の緩和策が試みられているが、「金利のある世界」が戻ってきている。

G7の中でも突出して政府長期債務残高・GDP比が高い我が国で、長期金利の上昇に伴う利払い費の増加が続けば、「予算が組めない事態」がすぐ近くまで来ていることを意味している。

政府が言う「潜在成長率を引き上げることを目的とする財政政策」は果たして効果が有るのか。

これまでも労働生産性は米国の6割程度、TFP(全要素生産性)は8割程度とする調査も発表された。

特にサービス業や中小企業の労働生産性が低いのは「日本病」とは言えないか。

また、労働生産性の高い自動車や電機も海外に出て行って久しき、生産性にはマイナスに寄与している。

かといってAIに活用も諸外国と比べてフル活用とはなっていない感がある。

こうした中で、働き方改革で総労働時間もへり、若者の減少で生産年齢人口も減っている。

潜在成長率を高めることは難しくなっている。

こうした中、「財政赤字を拡大させてまでも潜在成長率を高めること」は可能なのか。

◆目白押しの歳出増要因

経済成長の恩恵で税収が増えることはある。

しかし、こうした恩恵は景気次第だ。

毎年毎年、こうしたギフトが届くわけではなく、来難はどうなるかわからない。

逆に歳出増加の要因はほぼ恒久的なものが多い。

防衛、教育、福祉、所得格差是正、国土強靭化・・・

最近では「イチゴから艦艇」までの重点投資17分野や中東情勢を映じた物価対策。

こうした施策を講じなければ政権が持たないのかもしれない。

◆歳出の入れ替えを置き去りにしたまま、こうした歳出増に応じ続けることは可能なのか。

これまで既得権化した歳出をゼロから見直すサンセット方式なども魅力的な案だ。

しかし、歳出を切り込みたいところには、社会、企業、政治など各方面からの強い圧力がかかる。

「経済学的に、合理的に」・・・とはいかないのが現実だ。

これまではそうだった。

しかし、昨今の日本の財政の現状はここで留まって大丈夫か、歳出構造の転換を計らないと日本は持つのか、

という状況に立ち至っていないことを祈る。

(学23期kz)

財務省 正面
日本銀行 上空から

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