ハンガリー小話

東西冷戦時代のハンガリー、1989年の民主化までは、ソビエトの強い影響下に置かれた衛星国であった。

ハンガリー国民が西側を覗き始めた頃の小話。

電車の4人掛けの席に、アメリカ人、フランス人、ロシア人、そして、ハンガリー人が居合わせた。

しばらくすると、アメリカ人がカバンからマルボロの箱を取り出し、封を切ると、1本取り出し、煙草に火をつけた。そして一服すると、その開けたばかりの箱ごと、窓から外へ投げ捨てた。 それを見た3人がいかにももったいないと言いそうな顔をすると、そのアメリカ人は、

「アメリカにはこんないい煙草は有り余るほどある」

しばらくすると、フランス人がカバンからワインボトルを取り出し、栓を抜いてグラスに注ぎ、一口、口に含んだと思うと、ワインの瓶ごと、車窓から外に捨てた。それを見た3人が、高級なフランスワインを捨てるなんてもったいないと言うと、フランス人は、

「フランスにはいいワインはどこにでもたくさんある、捨てるほどある」と。

突然、ロシア人が立ち上がり、足元にあった大きなリュックから、ウォッカの瓶を取り出し、一気にラッパ飲み。そして、窓から外へ投げ捨てながら、

「心配するな!ロシアにはウォッカは腐るほどある」と。

さて3人は、残ったハンガリー人が何をするかじっと見ていたところ、ハンガリー人が突然ロシア人を抱え上げ、窓から外に一気に放り投げた。

ハンガリー人曰く、

「心配するな、ハンガリーにはロシア人が腐るほどたくさんいるから」

 

学23期  倉田一平(ペンネーム)