雪の日の思い出

山口大学経済学部同窓会

鳳陽会東京支部

【2024年 2月トピックス】  

◆思い出(1)

 ワンダーフォーゲル部に所属し、春合宿の前だった。メンバーで訓練のための山行に臨んだ。山口からバスに乗り木戸山峠を越えていく途中雪が降り始めた。だんだん激しくなって積もり始める中、峠の急こう配に差し掛かる。心配していた通りタイヤがスリップして動けなくなった。運転手は無線でやりとりしていたが、救援の車がタイヤチェーンを持ってくるまで一時間ぐらい動けないという。メンバー6人で後ろから押してみましょうかと申し出た。じゃあやってもらえるか、だがスリップしてガードレールに挟まれたり、転んで後輪に轢かれる危険があるので、くれぐれも注意してくれと言われる。バスがエンジンをゆっくりふかす中、皆で力を合わせて後ろからぐーっと押す。すると大きなバスが少しずつ動き始めた。ゆっくりとバスが進む中、バスの乗り口に向かって皆で走る。バスを止められないので飛び乗ってくれと運転手が叫ぶ。後輩が皆乗り込んだのを見届け、最後に自分が飛び乗った。やったーという気持ちでほっとした途端、かたずをのんで見守っていたバスの乗客達から大きな拍手が起きた。思いがけず、でもちょっと誇らしかった。

思い出

◆思い出(2)

雪のしんしんと降る深夜だった。道場門前近くの友人の下宿から自転車で帰る途中、リヤカーを引くおばあさんを見かけた。一の坂川を越える少し勾配のあるところで、うーんと力を入れているが雪で滑ってだろうかリヤカーは動かない。とっさに自転車を道に乗り捨て、リヤカーを後ろから押した。おばあさんは驚いたようだったが、勾配を登りきったところで声をかけ自転車に戻った。倒れた自転車を起こし、大丈夫かなとリヤカーの方を見ると、おばあさんが私に向かって手を合わせている。周りには人はおらず、ただ真っ白な雪が降り積もる静かな夜だった。おばあさんはどこまで帰ろうとしていたのか、もっと押すのを手伝わなくてよかったのか、今でも思い出す光景である。

【元ワンゲル部員A】

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