「武士の娘ですから」②

山口大学経済学部同窓会

鳳陽会東京支部

【2024年4月 トピックス】

【岡山支部からの投稿】

 私が学生時代、お世話になった山口市平川の下宿のおばさんの思い出である。

社会人となって久しぶりに平川の下宿を訪れた。

若いお嫁さんが玄関口で応対してくださった。今までになかったことだ。

彼女はこういった。

 「実は、義母は昨年、亡くなりました。よかったら、仏壇を拝んでもらったら・・・」

 せっかくの機会なので学生時代は出入りしたことない幅広の正面玄関から仏間に通していただいた。そこにはおばさんの遺影が飾ってあった。

 私がお世話になっていた当時、おばさんはいつも割烹着や野良着姿だった。ところが、その遺影は薄青色の着物を羽織られ、凛とした姿だった。

 お茶をいただきながら、お嫁さんと話をした。

私は下宿のおばさんの思い出を語った。

おばさんと朝、出会うと「おはようござ⤴いました」と独特の抑揚で挨拶をされた。昔の山口弁である。

 細面で、立ち姿も大変美しかったといった。

 そこでお嫁さんがいわれるには、義母は実は、武士の家の出の娘で、凛としていたのは生き方そのものであったと。

 「武士の娘ですから」とは決して口にされなかったが、凛とした立ち姿の下宿のおばさんの謎が氷解した瞬間であった。なるほど!

  ―続く

(岡山支部 B)

               

                

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