地方移住

山口大学経済学部同窓会 鳳陽会東京支部

【2023年3月トピックス】

往復の満員電車に揺られたサラリーマン生活に区切りが付き始めると、田舎での生活にあこがれるようだ。

また、最近ではコロナでリモートワークが進み、地方移住とはいかないまでも東京近郊の戸建て物件への需要が高まっているという。

ひと昔前、地方創生・地方活性化の機運が高まる中、地方移住の話が広がり、政府も各種インセンティブを付けて移住を後押しした。しかし蓋を開けてみると、思うように地方移住が進まなかった。

この時、地方移住を検討する場合、一番の抵抗勢力は「奥さん方」ということになった。

奥さん方が抵抗したのは、子供の教育問題もさることながら、一番の問題は「生活が不便になること」だった。

◆理想と現実

東京を離れ、田舎暮らしを求め山梨に居を移した山口・岩国出身の小説家・樋口明雄氏。

あこがれの田舎暮らし。

彼は田舎暮らしの実体験を『田舎暮らし「毒」本』にまとめているが、本の見出しには次のように書かれている。

【理想】

豊かな自然、美しい風景、広大な敷地、ログハウス、ウッドデッキ、薪ストーブ、井戸水、バーベキュー

【現実】

草刈り、雪かき、薪作り、狩猟問題、悪臭問題、地下水問題、地元民との溝、そして美しいものにはいずれ飽きが来るという現実

樋口氏いわく、この中で一番の難物は、「地元民との溝」だったという。いつまでたっても「よそ者」扱いされたのだという。

◆溝を埋める奥さん方

こうした人間関係の厄介な溝。

こうした溝を埋め、地域の人と自然なつながりを作るきっかけを早く作ることができるのが、奥さんと子供たちだ。

私のこれまでの経験に照らしてもそういえる。

ご主人同士はプライドがあり、周りの住人に挨拶もろくに交わさない。

しかし、子供が学校でクラスメイトができると、自然と奥さん同士が仲良くなる。

この絆が大きくなれば、徐々に地元民との溝が埋まる。このタイミングでご主人がその輪に入るのが自然で、すわりが良い。

兄妹や親せき同士、町内会でもそうだが、子供を通じた奥さん同士の仲の繋がりが最も自然であり、一番強い。それにご主人が乗っかれば、世帯同士の付き合いがうまくいく。

その逆、すなわちご主人同士の仲が良いサークルがあるとしよう。ご主人は半ば家族孝行でバーベキューや日帰り旅行に奥さんや子供を巻き込みたくなる。しかし奥さんや子供が付いてくることは、まずない。

奥さん方の絆やネットワークは、殿方とは違った深みや広がりがある。

脱サラで飲食業を始めるとする。この時、ご主人は当時の上司や同僚、部下、友人をお客として見込む。しかしこうした昔の仲間は当てにならず、ましてや常連になる客になることは少ないという。一番客を引っ張ってくるのは奥方たちの仲間であり、力を発揮するのは奥さん方のネットワークだという。

奥さんには頭が上がらない。

どの家庭でもそうだ。

大臣だってそうだ。

大臣よりも偉い人は誰か。

それは大臣の奥さんだという。大臣でも奥さんには頭が上がらない。

(学23期kz)

樋口氏は令和4年11月に防長倶楽部で講演しており、その講演録が会報誌『防長倶楽部』の令和5年1月号に掲載されている。

山口大学経済学部同窓会 鳳陽会東京支部

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One thought on “地方移住

  1. 9年半の生まれ故郷の広島勤務を経て、32歳の時に初めての本社勤務になり、菊名の独身寮から日比谷迄通勤地獄の中、始発駅の菊名での椅子取りゲームに悉く敗れ、わざわざ桜木町迄引き返し座ったことを思い出しました。
    大嫌いだった首都圏(横浜→川崎→横浜→東京)に住み着いて、トータル33年余りになります。

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