メシヤ、我が想い出 ⑤上高地

山口大学経済学部同窓会 鳳陽会東京支部

【2023年2月トピックス】

気分を変えたいときには、たまにお婆ちゃんの喫茶店に行った。大学正門前、今は無き長門館の並びにあった「上高地」。

上高地・・・いい響きだ。

当時、新開地の平川地区で喫茶店といえば上高地くらいしかなかったような気がする。

店の入り口にはKEYコーヒーだったか、UCCだったか、大きな目立つ看板があったが、ここでコーヒーを飲んだためしがない。

注文するのは決まってカレーライス。

お婆ちゃん煮込んだ、こってりカレーが気に入っていた。

興が乗った時にはカレーのお供にチャーハンを注文した。

カレーとチャーハン。炭水化物の2丁拳銃。

インドと中国の両大国で古くから受け継がれてきた伝統の調理。

どちらも銀のステンレスの皿に盛られており、匙一本で交互に口に運ぶ。

納得のいく旨さに、時折こぼれそうになる笑みを独りこらえながら、黙々と完食に向かって匙を運ぶ。

最後のひとすくいを終え、まなこを閉じる。

そして、周りに悟られないよう小さく合掌。

このうまさ、この歓びが、抱えている様々な痛みや悩みを溶かす特効薬になってくれた。

ありがたや。

上高地のお婆ちゃんは物静かな上品な方であった。

小柄で、顔の作りはやや下膨れ。おっとり型で、右の口元に上品なイボがあったような気がする。ショートカットの髪には上品なパーマがかかり、淡い草色のワンピースが良く似合っていた。

これまでどのような人生を歩んでこられたのか。

もともと山口の方なのか。

待てよ。

お婆ちゃんだったが、当時、年の頃はいくつくらいだったのだろう。

当時二十歳の私からみたお婆ちゃん。

今思えば結構若かったのではないか。

長門館の双子のお嬢さんと同様、上高地のお婆ちゃんとも、世間話ひとつ交わすこともなかった。

(学23期kz)

山口大学経済学部同窓会 鳳陽会東京支部

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